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君の名は。の3104のレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
4.0
新海誠の作品はこれまでに何作か観た。
オムニバスの『秒速5センチメートル』、50分に満たない『言の葉の庭』など、短~中編ではそのセンチメンタリズム溢れる世界観の構築と登場人物の逡巡や陶酔の描写で、観るに値するものを提示できると認識していたが、果たして長編ではいかに?といささか不安ではあった。というのも『星を追う子ども』(116分)の“惨憺”が心に強く残っているからだ。しかし公開されるや否やなんだろうこの絶賛の嵐と大入りの報道は。決してそれに安心した訳ではないが、ならば観てみようと思ったのは紛れもない事実。

結果は-
長編も一応クリアした、といったところ。
その“勝因”は人物の動かし方にあったのではないかと考える。これまでの諸作では受動的だった登場人物達を能動的にしたように見えた。その推進力がジョイントとなり、長編でも空中分解せず、しかも作品自体を一級のエンターテイメントに昇華できたのではないかと思う。

人やものと、それを繋ぐものの配置や託し方が秀逸だった。
彗星、時間、口噛み酒、組紐・・。
いってみれば非現実な「SF」を、人の生活や感情によりそった要素できっちりと(かつ優しく)繋ぎ止め、物語を地に足をつけさせる事に成功している。

物語の構成。最初は「対」が強調されていたが、途中の“ある出来事”から円環の様相も成してくる。
3年という時間の中で永遠に回り続ける(もしくは回転を止めてしまった)円環。本来なら重なり合うことのない「3年遅れの円環」(火口頂上の“お鉢”を、互いの姿を見つけられずグルグルと彷徨う2人に象徴されている)は、“彼は誰どき”~これの方言「かたわれどき」のかたわれとは、やはり隕石のそれあのだろうか~の力を借りて重なり合う。ある意味物語のピークであったこのひとときが儚くそして美しい。

作品を彩る大きな「顔」のひとつに、要所要所で流れるRADWIMPSの曲がある。タイミングや歌われているであろう内容を聴くだに、物語にはよくマッチしているのだと思う。
しかし強めに漂う「RADWIMPS臭」(この辺りは好みの問題ですが)や、同じくやや大仰なセリフ回しなどが観ていて鼻についたのは事実。とはいえそういうtoo muchな部分は、いや部分が昨今の客層にうけるのであろうかと。

あとこれは『シン・ゴジラ』でも思ったが、東京(やそのごく近郊)に住んでいないと享受できない要素があるのはやはり残念。飛騨地方の描写も多いが、あくまでもそれは「東京から見た地方」という視点に基づいている。あらゆるものの“集中度合い”を鑑みると、仕方がない事ではあろうが。
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