きゅうげん

マーターズのきゅうげんのレビュー・感想・評価

マーターズ(2015年製作の映画)
3.5
トーチャーポルノ宗教映画の大怪作をリメイク。
「拷問という暴力的な手段によって、強制的に宗教的な昇天を再現する」というショッキングな設定はそのままですが、教科書的な起伏とオーソドックスなカタルシスでわかりやすく組み立てられており、またロジェ版では味薄めだった孤児院時代の交流や、誘拐されてきた他の被害者との協力・共闘なども加わって、シスターフッドもののリベンジムービーとして再構築されています。

そのためオリジナルの強みである、吐き気をもよおすエグすぎるグロ描写は控えめ。
寡黙なオッサンがただ殴ったり蹴ったり、無理やり飯を食わせたり、という怖すぎるシチュや、ほとんど改造人間みたいな被害者とかトラウマ幻覚モンスターとか、ヤベー描写・ヤベー表現は鳴りをひそめホラー的には牙を抜かれた感がありますが、友人関係の機微や少女の存在などドラマ性に重きをおいていて、とくに「いまわの際に見えたものは、幼い頃の楽しい思い出」というラストは、“池塘春草の夢”感あっていいですね……。
本家とはずいぶん異なるテイストですが、また違ったいい味の出ているリメイクでした。

……てか誘拐してきた女性を無理やりアセンションさせて、死後の世界とか霊魂の不滅とかを調べるって、やっぱあの組織そもそも無理があるでしょ。
作中でも言ってたけど、そんなに確認したいなら自分で死んで見てみろや!