食事のシーン。
家の中のカット。
「手」の写し方。
暗転の使い方。
ああ、是枝監督だ...と思った。
おばあちゃんが一人暮らしをする団地の部屋の様子ひとつとっても、説得力がすごい。
冷凍庫で凍らせたカルピスを「冷蔵庫臭いんじゃない、これ」と言いながらガリガリ削る姿とか、母親にぞんざいにお代わりを頼む口調とか、母親にしてみれば、きっと男の人っていくつになっても子どものままなのね。
響子が自分の将来や息子を育てることを考えて、現実的に前に進もうとするのに対し、「なりたかった大人になれなかった自分」を持て余して折り合いをつけられない良多の言動は、男女の違いだなぁ、と思う。
「そういうの、打算って言うんだ」「人生設計って言うんです」というやりとりに象徴的。
「家族」の物語、と想像していたよりも、「男と女」の物語に見えた。
きっと、わたしには子どもがいないし、まだ何も諦めていないからだろう。
どちらかと言えば、「なりたい大人になんか、そう簡単になれるもんじゃない」と言われるほうの年齢だからだろう。
月並みですが、やっぱり、樹木希林はすごい...
