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ザ・ハロウ 侵蝕のTTのレビュー・感想・評価

ザ・ハロウ 侵蝕(2015年製作の映画)
4.0
「未体験ゾーンの映画たち2016」1本目。未体験ゾーンは毎年観に行っているが、1本目がアタリだった試しがない。一昨年は『アウトロー(アイスランドの方)』で、去年は『オール・チアリーダーズ・ダイ』。どっちも悪くはないんだけど、「もう一声!」と感じるような映画だった。しかし、本作は大アタリ!!。 同じ未体験ゾーンの映画たち2016で上映している『デス・ノート(2015)』と並んで、イギリス製のホラー映画のクオリティの高さを感じさせる作品。

近隣の住民たちが神聖化しているアイルランドの森に移住してきた森林調査員の一家。しかし、その森には“ハロウ”と呼ばれてる怪物たちが棲んでおり、一家は彼らの聖域に踏み込んだことで恐怖に見舞われるのだった。

僕がこの映画のことを知ったのは、未公開の映画だけを取り上げるブログで、“『もののけ姫』なクリーチャーホラー”という風に紹介していた。観るまで「なんだソレ?」と訝っていたが、実際に観てみると本当に『もののけ姫』的な要素のある映画だった。「人間」と「森を守る怪物」という対立構造や、猩猩と黒いうにょうにょみたいのが出てきたりと『もののけ姫』っぽい。

『もののけ姫』に似ているというのに通じることだが、美術や怪物の特殊メイクが凝っていた。特に、主人公のお父ちゃんが、怪物にさらわれた自分の子供を取り返すために、刃が炎でボーボー燃えている大鎌を携えて怪物たちの巣穴に向かう所は、死ぬほどカッコイい。あの場面だけで、白飯三杯はいける。あと、『死霊のはらわた』のネコノミコンみたいな書物や怪物たちの住処である洞窟が『ヘルボーイ』みたいだったのは気のせいか。

中盤までは怪物たちによるホームインベージョンモノな展開が繰り広げられる。怪物たちは夜行性なので、夜の場面が多い。あんまり暗い画面が続くと、客としてはついつい眠くなってしまうものだけど、本作ではわずかなライティングを巧みに使い、緊張感を途切れさせることなく、画面への集中力を維持させる。カメラのフラッシュをライト代わりに使うというのはベタな気もするが、カメラ特有のフラッシュ音が恐怖感を煽っていて良い使い方をしていた。

そして、後半はネクロノミコンのような書物に、怪物は子供を狙っていて子供を誘拐して偽物を返すという事が書かれていたことから、「自分たちの子供が怪物の仲間では?」という疑心暗鬼サスペンスへとなっていく。ラストは「家族の絆」なところで終わっていたのは意外だった。

不満を挙げるとすればケレン味、つまりは派手な場面が少ないことだろう。前述した、刃が燃えた大鎌を携えた父親が怪物たちの巣穴に入るまではテンションがもの凄く上がるのだが、肝心の戦う場面はあっさりフェードアウト。もうちょっと怪物たちとの死闘に焦点を当ててもよかったのではというのが正直な気持ち。

しかし、本作がハイクオリティな作品なのは間違いない。その証拠か、本作の監督コリン・ハーディは、エドガー・ライトの推薦によってリメイク版『ザ・クロウ』の監督に選抜されたそうな。今後が期待の注目株を確認するという意味でも必見。
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