Aria

ダンケルクのAriaのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
5.0
ジャパンプレミア。35mmフィルム上映
下にIMAX上映、フィルム上映の
感想も書いています。


1時間46分、76ページの脚本。
良い意味でものすごく長く感じました。
(細かい数字うろ覚えです)

チッチッチというノーラン私物の
時計の秒針をハンスジマーが
音楽に取り入れたとのこと。

その時計の秒針が
焦りや不安を助長させ、
もれなく観ている人を
同じ境地に誘い込みます。

自分の鼓動が見事に
ノーランに操られている感覚…

ストーリーも音楽も含め
ずっと緊張感が続きます。
ほっとできるのはほんの数秒程度。
心休まる時が無い、まさに戦場です。

回想や幻を見せるシーンなんてなく
現実逃避することもできない
ただただいつ死んでもおかしくない
死の恐怖を突きつけられます。

映画でここまでの
戦争体験をさせるとは流石としか
言いようがありません。

敵兵の姿、顏が一度も視認できないのも特徴。
敵兵まで見せてしまうと
観る側はあくまで第三者目線で見てしまっていただろうし

追い込まれている側の人間は
いつどこで狙われているのか、
見えない敵に常に怯えているもの。

イギリス、フランス側の人間にのみ
焦点を絞っていることも
没入感ポイントのひとつでした。

【35mmフィルム上映】
全体的に黄色味がかった
懐かしさを感じる雰囲気
ごくたまにパラがでるが
味わいがある。

歴史を扱う作品とは相性が良く
当時の現地人が撮影してきた
ドキュメンタリーを見ているかのよう。


【IMAX鑑賞】
迫力あるスクリーンと鮮明な映像
爆撃音が心臓に響く程、
高低音がはっきりしている。

より広い範囲の映像を見ることができて
尚、自身の目で見ているかのような
リアルな景色のため臨場感、
没入感は抜群。

フィルム上映に比べると
より鮮明な戦争体験ができます。






以下、追記

※内容に言及していますので
ネタバレが大丈夫な方のみご覧ください。



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ファリアの燃料の計量器が故障してしまい
残り燃料数をコリンズに確認しながら
飛行していた時のこと。

基地に帰還するための
燃料を確保しつつ戦わなければいけない中、残り15ガロンを確認した所で
コリンズが戦線離脱。

そして場面は変わり
戦艦と、その側に商船
離れた所にドーソンさんの船。

15ガロンから時間は経っており
計量器に目をやるファリア。
そこでファリアは帰りの燃料を捨てる
ことを決意して敵機の撃墜に。

セリフは一切ありませんが
それ以降一度も計量器を確認する
シーンはありません。

そしてラストのダンケルクの浜で
誰ひとりいない浜(防衛陣の外側つまり敵地)の上を蛇足飛行している時

間違いなくこれから着陸するのは
敵地でありつまりそれは自分の死を意味する。

そんな追い詰められた状況でも
落ち着いた表情でいられるのは
随分と前に自分の死を覚悟したから。

そして最後は海を背にしながら
共に戦った燃えるスピットファイアを
見つめる。

仲間を脱出させる任務を完遂し
悔いなんて感じていないからこそ

海の向こうにある故郷を背にできる。
戦いきった仲間(スピットファイア)の
最期を看取る。
かっこよすぎて辛い…



そして謎の兵士役、キリアンマーフィー
トラウマを抱えた彼は
ダンケルクに向かう事を拒絶し
ドーソンさんの船で暴れます。

その拍子で怪我をした船員のジョージ。
処置にあたったピーターは
ジョージが重傷であることを知ります。

「彼は大丈夫か?」と聞いた
兵士に大して怒りに震えながら
大丈夫じゃないと答えます。

その後場面は変わり
商船と戦艦から逃げてきた
重油まみれの兵士たちを救助したシーン。

他の兵士からジョージが死んでいる事を
聞いたドーソン親子は動揺します。

そこで謎の兵士が
また彼は大丈夫なのか?と不安そうに
尋ねてきます。

ああ、と頷きながら返事をするピーター。

先ほどまでは謎の兵士とコリンズだけ
だったが、うってかわって
過酷な戦地から生還した兵士たちで
溢れる船。
自分の船に救助した兵士はごく僅かで
その他に亡くなった兵士が何十万といる。

誰しもが命をかけて戦地に向かい
死と隣り合わせで戦ってきた。

そんな中で謎の兵士を攻める事など
できなかった。
ジョージもまた命をかけて
ダンケルクに向かったと悟ったのかなと。

それからのダンケルクの若き英雄記事は
大号泣ものでした…。
Aria

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