IMAX鑑賞
極力控えられた台詞が、爆撃の轟音と緊急を高める時を刻む音を含めたサウンドを腹に響かせる。
陸、海、空。
英国までの距離は同じだが、時間的距離感の圧倒的な差をそれぞれの視点で描き、一つのシークエンスに三つのフォーカスが当てられる鋭い角度に息が詰まらされる。
港町の市街戦から、命からがら脱出口たる砂浜へ抜ける主人公。
そこには青い空と海が広がり、英国まであと少しと希望の光りが差す。
しかし、そこにも空からの攻撃が加わり、晴れ渡っていた空も靄がかかり出す。
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編隊飛行の美しさと空中戦以外は一方的な爆撃、銃撃、魚雷による被弾のみ。
ドイツ兵の姿は誰一人としてはっきりとは映されない。
戦争を描くというより、帰郷への思いや生きることの困難さを見つめさせる。
ノーランの冷徹な視点が、事実を描いた物語である以上に真理を浮き彫りにしているようだ。
足掻かないと前には進めないが、足掻いても倒れるかもしれない。
息苦しいなんて言っていられない。
ただ一つ、残念だったのは40万人中30万人以上が救出されたという歴史的大事実を体感出来なかった事。
包囲するドイツ軍80万人。
それをスクリーンに収める事は無理なのだが、迫り来る大軍の目に見えない圧迫感とそこからの解放を期待した観客は多かったのではないか。
IMAXでなければ、この迫力は数段落ちたやも。
通常上映との差は名画座上映で確認しようと思う。
2017劇場鑑賞84本目