Smoky

ダンケルクのSmokyのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.1
ただひたすらに敗走する兵士たちとそれを助ける人たちを描いた2時間弱。突然シュワルツェネッガーやスタローンやステイサム的な存在が現れて敵を蹴散らしてはくれないし、友軍戦闘機の助けも虚しく人を満載した駆逐艦は次々と沈められていく…。
抜群にカッコいいトム・ハーディ様以外に英雄的行為は無く、もちろん滅びの美学に酔った美しい最期もない。兵士たちは虫ケラのように魚雷や砲弾に吹き飛ばされながら、それでも黙々と逃げ、黙々と助けを待つ…。

つまりこの映画は「逆走する『プライベート・ライアン』」である。

さすがに観てると気が滅入ってくるので、ノーラン監督は「商業映画として成立させるために」(仕方なく)情緒的に演出してはいるけど「本来は必要ない」と思ってるハズ…。
彼はリアリストであり(その結果としての)ニヒリストであり根本的に人間の存在やその営みについて幻滅していて、だからこそ彼の映画からはそういった「闇」みたいなものを感じるし、そこが好きな理由でもある。

本作では、アカデミー賞を受賞した映像と音響を駆使して「戦争って本来はこーいうもんだよねぇ」と伝えたかったろうし、『バットマン三部作』ではアメコミのフォーマットを利用しつつ「オマエが一生懸命信じて守ろうとしてる人間って本当にそーするだけの価値あんの?」という命題を突きつけられる。
そしてそれを(自分みたいに)捻くれて観れば読み取れるぐらいには分かりやすくしてくれるのが素晴らしい。やっば好きだなぁ、ノーラン監督。
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