rollin

映画 聲の形のrollinのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
3.5
そもそも『聲の形』という作品は漫画という音の無い媒体でこのテーマに挑戦したことに意義があって、原作でボロンボロンに泣かされた自分としては映像化する必要は無いと思ってたし、全7巻でも目一杯な内容を2時間強で描くのは至難の技。

実際映画を観てみると、危惧した通り本編のダイジェスト版みたいな仕上がりになっていた。重要な小学校時代のエピソードの非効率的な省略と、お粗末なモンタージュによる説明は、原作未見の観客に対してあまりに不親切。彼らの映画づくりのくだりもまるまるカットやから、何かを築き上げた様には見えへんし、良いと感じたところは概ね原作の良いところ。登場人物を描くのにも圧倒的に尺が足りへんから、花火を打ち上げる為の着火剤となるエモーションも燻ってる。

ただここまで文句を言っておきながらまたしてもボロンボロンに泣いてしまったし、故に涙の量が必ずしも作品の良し悪しの指標にはならんということも学びました。
無茶な企画の割に一応筋は通ってるし、アニメのクオリティも高い。声優には詳しくないけど、各々とても役に馴染んでいたし、小学生時代の主人公を演じていた松岡茉優はめっちゃ良かったね。
冒頭のMy Generationとエンディングのaikoの選曲には苦笑い。劇中では音の演出に繊細な気配りも感じられたのに、なぜエンドロールで節操をブチ壊すんやろ。むしろ最後音楽はいらん。画面のボケ味のウソっぽさ。もっとフォーカス送りを多用して視点の変化を利用して欲しかった。

音があるメディアやからこそ、音の無い硝子の視点で世界を描くことも出来たはず。それこそ原作が目指した不可能性から可能性を描く『聲の形』やと思うねんけどな〜。
rollin

rollin