modernboy

映画 聲の形のmodernboyのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.7
いつもみたいに○○○な映画と描きにくい作品。
敢えて言うなら、とても骨太な京アニの良作!です。

登場人物に「善い人」が少ないのが、珍しい気がする。

ストーリーは主人公のどん詰まりから始まるんだけど、その描き方が凄い。
身辺整理して、お金を返して、橋に行き投身自殺を考える。
紆余曲折を経て自宅に戻り翌朝、母親の言葉から金額が「170万」という具体的な数字で鑑賞者に突きつけられる。

高校入学したての「やーしょー」を考えれば、中学生時代に母親への自責の念から一心にアルバイトに明け暮れていたことが想像できる。
170万!
その数字を自分の中学時代に当てはめることで一気に鑑賞者は「主人公寄り」になる構図が出来上がってる。

かつ、その前後でいじめた「西宮さん」との再会、そして、主要キャラ以外の顔にバツ印が貼られている描写。
やーしょーが他者とのコミュニケーションを避けてる=過去の自身がいじめられたトラウマと、いじめた相手との再会。
絵的には少しポップで落ち着いたトーンなんだけど、読み取れるものはジェットコースター級に情報量に富んでる。

面白いなと思うのが、絵のタッチがポップだからか(背景含めて)、いろんな意味の残酷さが「わかりやすいのに、わかりにくい」ことになってる。
「いじめ」が関わるテーマって絶対に寒色系でトーンを固めたがるんだけど、この映画は暖色です。
だからいじめ描写も「絵的にはわかりやすいのに、感覚的にはわかりにくい」ことになってる。

学校の池に落とされるやーしょーも、池に浮くノートとか、水に濡れたやーしょーの髪に目が行きやすい気がする。

まるでボディブローのよう。
殴られてることはわかるのに、後からジワジワとそのダメージが聞いてくる。
この下敷きの徹底が、ラストの涙腺崩壊ポイントに直結してます!!

とても上手いなと、作り方が丁寧で狡猾ですね笑
まんまとハマりました。


純粋な感想だと…
個人的にアングルがとても好きです。
そして、冒頭の再会で見せた手すりの下りが回収されるのも好感度、大でした!

男としては、母親の耳の傷痕とか、
それを見た瞬間にフラッシュバックする記憶とか。
過去の記憶との現在の時間軸の組み合わせがとても良かった。
modernboy

modernboy