チョマサ

ダゲレオタイプの女のチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ステファンとジャン、それぞれが体験する物語が違っているのがおもしろかった。ジャンは、マリーと添い遂げるために土地売買に画策したりと『サイコ』の前半みたいな犯罪ものみたいになるし、果てに逃避行のラブストーリーになる。父ステファンは、ダゲレオタイプの撮影技法を蘇らせるために、芸術家が狂っていって死んでいくような物語になっている。

ただ、ジャンとステファンたち、それぞれ狂っていく原因が、おそらくふたつ示されているから、よく分からなくなっている。マリーやドゥーニーズの幽霊によって狂わされてしまったか、もしくは芸術にこだわり過ぎたために妻を死なせてしまった後悔や、貧困と大金をつかむチャンスが目前にきて失敗してしまったため、狂ってしまい、ああいう幻覚が見えるようになったか。真実が不明だからこそ、現実/非現実が混ざりあって、予測がつかなくて、観ているものの何が本当かわからない、不思議な映画になっている。

筋弛緩剤を使っていたからドゥーニーズの死因は自殺じゃないんじゃないかとか、マリーはとっくに死んでいるんじゃないか、狂って階段から落として死んだんじゃないか、河でマリーがいなくなったのはジャンがあそこでマリーを捨てたからじゃないか、マリーが死んだら金も手に入らない、いろいろと解釈の余地がありそうに思う。でも、どっか見落としてるのかもしんない。

工事中の街をあるいていく冒頭が、後から出てくる屋敷の売買の話の伏線になっているのもうまかった。背景ですんなりと話の段取りをたてるのがいい。生活や仕事を映す場面も、ジャンが金に拘る理由や、ステファンの狂っていく理由を示すための段取りだったんだなとおもう。

ダゲレオタイプやそれで撮られた大きい写真などのガジェットも魅力的だし、夜のまちや屋敷の寒々しさもよかった。

あと国内で撮った作品よりも、映像がよかった。
チョマサ

チョマサ