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不滅の女のakrutmのレビュー・感想・評価

不滅の女(1963年製作の映画)
3.4
トルコのイスタンブールで出会った謎多き女性と、彼女に惹かれて追い求める男性を、時系列を切断したショットの連鎖などの実験的な映像技法を用いて描いた、アラン・ロブ=グリエの監督デビュー作。

『去年マリエンバートで』で脚本を担当して脚光を浴びたヌーヴォー・ロマン作家のアラン・ロブ=グリエだけあって、それ以上に前衛的な手法を用いた理解不能な作品に仕上がっている。時系列が切断されていると言うよりは、虚実の境界をまったく曖昧にしたままで描ききったという感じ。原題のL'Immortelleが死なない人を意味することからもわかるように、謎の女性は「死なない=虚構の」存在なのである。すべてが男性の想像上の虚構であるとも解釈できるし、現実と虚構が入り混じっているとも解釈できる。ポイントは、暗い部屋の中からブラインド越しに外を覗く男性の姿。これだけが現実で、それ以外が虚構とも言える。いずれにしても、我々は全ての真実・現実を知ることなど出来ないという「真実の不可知性」を徹底的に追求することを意図した作品であることは間違いない。また、このような多義的な解釈が成り立つ映像を提示することで、観賞側に様々な認知的な効果をもたらすことも意図しているだろう。

とは言っても、それが好きかどうかは意見の分かれるところである。個人的にはアラン・ロブ=グリエ作品はあまり好きではないが、小説は読んだことがないので機会があればチャレンジしてみたい。謎の女性を演じているフランソワーズ・ブリオンは美人だけど、本作ではごつさが目立っていてあまり好きにはなれない。一方、謎の女性を素性を明かす小柄な女性(すごく背の低く見える)を演じているのは、アラン・ロブ=グリエ監督の妻であるカトリーヌ・ロブ=グリエ。彼女は作家でもあり、『イマージュ』というSM小説を匿名で上梓している。この夫婦の性的嗜好はノーマルではなかったらしい。
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