3104

花嫁のため息の3104のレビュー・感想・評価

花嫁のため息(1956年製作の映画)
3.4
結婚したばかりの新婚夫婦が巻き込まれるドタバタを描く、1時間にも満たない中編映画。市川雷蔵の『又四郎喧嘩旅』と併映。

粗末ながらも結婚式を挙げたばかりの夫婦。その夜はいわゆる「初夜」なのだが、そこに新郎の旧友が転がり込んで来る。翌日は郷土の恩人が東京見物に。果たして二人きりで過ごせる時間はやって来るのか・・。

花嫁役に新進女優の若尾文子。ぷっくりとした顔立ちがまだまだ初々しい。
短い話でありながら、冒頭(一度チラッと映る以外は)10分ほどは彼女が出てこない。ようやく登場するも最初は手だけという焦らし。予算も少なめのプログラムピクチャー(ちなみに彼女、同年には溝口の『赤線地帯』にも出演。大作や芸術的な作品での彼女もいいが、特に初期の他愛ない作品での彼女もまたいい)でありながら、彼女を大事に、可愛く描こうという作り手側の意志を感じる。
事実、この映画での~いや「この映画でも」か~彼女はチャーミングである。特に初夜と知らずも転がり込んできた新郎の旧友、船越英二(彼の図々しい演技がまたよろし)が帰ると言った後の笑顔や動きなどはことに愛らしい。

そんな彼女と結婚した貧乏サラリーマン役に根上“伊吹隊長”淳。頼りない、甲斐性のない男の役がよく似合う。
他に岡村文子/左卜全、市川春代/藤原釜足の夫婦や東野英治郎などが話に彩りと活力を添える。

「初夜」の重要性や温泉マークの連れ込み宿など、現在では通じにくい描写もあるがそれはそれ。見方を変えれば後楽園ゆうえんち、ヤンキース来日、偽竜文切手など、当時の時事風俗が窺えて興味深い。古い映画の前向きな楽しみ方である。
3104

3104