映画ネズミ

パターソンの映画ネズミのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.2
向いている人:
①まったりした映画が見たい人
②ドカーン!ボカーン!がする映画に飽きた人
③アダム・ドライバーが好きな人

 こんばんは、映画ネズミです。

 「映画ネズミ、新しいチーズを食べてみる。」特集、今回がさしあたっての最終回となります。

 取り上げる作品は、ジム・ジャームッシュ監督『パターソン』です!!

 Followerさんの評判がすこぶる良いこの作品を、ついにアマゾンプライムで見ることができました!!

 ニュージャージー州のパターソンという町に暮らすバス運転手のパターソン。彼は、朝起きて、妻のローラにキスをして、朝食を食べて出勤し、昼食を食べながら頭に浮かんだ詩をノートに書き留め、家に帰ってから夕食を取り、犬の散歩ついでにバーに寄る、という生活を続けていた。毎日、同じような日が続いていくが、彼の詩はノートに書きためられていく。

 この映画、あらすじで書いたような場面以外にも、同じような場面が続きます。

 バスの運転席で詩を書いていると、車庫長のドニーがやってきて話をする。

 運転しながら、お客さんの世間話に耳を傾ける。

 家に帰ると、奥さんが模様替えをしている。

 バーでは、ビールを1杯飲む。

 ごく当たり前の日常。『スター・ウォーズ』シリーズや『アベンジャーズ』のような、「銀河の危機」や「宇宙最大の敵出現!」みたいなことは、全く起こりません。

 でも、同じ日なんて1日もないんですよね。

 パターソンの詩は少しずつ進んでいくし、

 朝起きる時間も、ドニーと交わす言葉も、バスの運転席から聞こえてくる話も、見かける双子も、奥さんがしている模様替えの内容も、バーに来ている客も、すべて違う。

 劇的なことが起こっているわけではないけど、常に彼の周りで何かが変化している。その変化を見つけるだけで楽しいですし、変化に合わせて変化していくパターソンの繊細な心が、美しい詩に反映されていくところがロマンチックです。

 本作は、いろんなことにリアクションしていくアダム・ドライバーをひたすら愛でる映画ですので、「カイロ・レンが真人間に育った方の世界線」の話として見ても、差し支えないです(強引)。

 可愛いシーンがいっぱいあるんですよ。

 奥さんに「こっちを見て」と言われて、両目を隠すパターソン。

 奥さんからギターをねだられて、正直「ちょっと高くない……?」と思っている顔のパターソン。

 夕食のパイが明らかにしっくり来ていないんだけど、すぐ水飲む&会話を盛り上げる作戦で乗り切ろうとするパターソン。

 散歩の道選びで犬のマーヴィンに根負けするパターソン。

 どのシーンも可愛いです。

 さらに、あるショックなことが起こった後、周囲に当たることなくある行動に出るパターソン。偉い!

 女の子に逃げられて光の剣振り回してた頃とは大違いです笑(映画が混ざっちゃいました)

 可愛いと言うと、奥さん役のゴルシフテ・ファラハニが本当にカワイイ!

 ベッドを着たまま(←こういう言い方がピッタリ)起きてきたときの顔、カップケーキを褒められた時の笑顔、ギターが届いて得意満面のなりきり顔。どれも永久保存版です!

 中には、「ワンジャック(犬のハイジャック的なやつ)」というパワーワードが出てきたり、後半いきなりとち狂った行動を取る人物が出てきたり、ほとんど「神」か「天使」のような存在感で出てくる永瀬正敏など、「実はこの人変わった映画を撮るんじゃ?」と思わせる節もなくはないところが、ちょっと侮れないなと思いました。

 そうしてみると、次回作『デッド・ドント・ダイ』が、さっそく賛否両論、荒れているそうで笑

 私の予感は間違いじゃなかったのか? とにかく、他の作品を見ないことには、どういう人かまだ分からない、底知れなさを秘めていた気がします。

 ジム・ジャームッシュの作風が味わえるおススメ作品がありましたら、ぜひ教えてください。

 ということで、日常を切り取った、まったりと、ほっこりとできる名作『パターソン』でした。

 次回は、ウディ・アレン監督の『マジック・イン・ムーンライト』の配信〆切が迫っていたので、とりあえずそれを見て、レビューしたいと思います。

 題して「映画ネズミ、チーズのおかわりをする。」です。乞うご期待。

 最後に、この映画で一番心に響いたセリフでお別れです。

 何があっても日は昇り、また沈む。毎日が新しい日だ。

 今日は、ここまで。
映画ネズミ

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