わたふぁ

パターソンのわたふぁのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.0
詩作をライフワークとするバス運転手・パターソンの一週間。いつも彼は、どこからか舞い落ちる言葉を拾い集めて、咀嚼し一冊のノートに詩をしたためている。

朝起きて、妻のきれいな横顔にキスをし、シリアルの朝食をとって出勤する。乗客の会話に耳を傾けながら今日も安全運転。家に帰ったら妻が作った夕食を食べ、犬を散歩に連れだす。途中でビールを一杯ひっかけて、あとは布団に入って妻と向かい合うようにして眠る。ただそれだけの毎日。

特別な出来事などほとんど無い。バスが故障して動かなくなって乗客を困らせてしまった時は、スマホを持っていれば良かったかもしれない。だけど乗客の1人の子がキッズケータイを貸してくれたので、何事も起こらなかった。いつもより少し帰宅が遅くなっただけだ。

またある時、パターソンは大事なノートを失ってしまう。書き溜めた詩の全てを失った。糸を紡ぐように少しずつ繋げた言葉は、もう二度と戻ることはない。パターソンは少し絶望する。だけど予期せぬ形で、また書きたいと思える“新しいノート”に出会うこととなる。

スマホは、たしかに便利だけど、生活が常に便利である必要があるのか疑問だし、なんでもデータ化して保存できるのもどうなのか。多くのものが半永久的に残ることは本当は間違っているし、形あるものはいつか必ず壊れて無くなるべきだ、と。

そんなことが、“ジム・ジャームッシュ語”で書かれた映画だと思った。