りっく

レゴバットマン ザ・ムービーのりっくのレビュー・感想・評価

4.3
バートン版、ノーラン版、そして初期のテレビシリーズの迷走期を含めたバットマンシリーズを俯瞰してメタ的に茶化す視点を終始持ちながらも、まずバットマン=ブルースウェインが抱える葛藤や苦悩という根源的なところにきちんと降りていき、そこからきちんとドラマを作り上げている点がまず見事。冒頭から各映画会社のロゴが出てくるところにウェインのナレーションが入るのだが、その内容がイチイチ最高で、「デッドプール」もそうだがヒーローものというジャンルと絶妙な距離を置く語り口は実に現代的だ。

それでいてキャラクターの内面を見つめ、孤児であるという生い立ちから家族を持つことを最大の恐怖としているアイデンティティ、ジョーカーをはじめとする悪を挫き平和のために粉骨砕身しているのに、街が平和になってしまえば自分の存在価値は無くなってしまうという矛盾と葛藤、実業家とスーパーヒーローという両面性を隠すために、人間から距離を置いて生活するという孤独とある種の変態性を、基本的には面白おかしく、でも笑い飛ばす裏にある影の部分が物語のコクとなっている。

パーソナリティーの部分を見つめつつ、バットマンと他のキャラクターの関係性もこれ以上ないほどテンポよく描かれるのも心地よい。特別な存在だとバットマンに思われていないことにショックを受けるジョーカー、同じヒーローなのにリア充のような生活をするスーパーマン、功労者抜きでパーティーをするDCコミックスの連中、ジョーカーにこき使われることに嫌気がさし反旗をひるがえすベインやキャットウーマン。一見さんでも楽しめるテンポの良さは勿論のこと、ファン垂涎の小ネタが無数に散りばめられており、初見で全てを把握するのは不可能なほどの情報量の多さと密度が嬉しい。

ここまではある程度予測していたが、悪役軍団にワーナーが誇る歴代の人気キャラを総登場させたのにテンションが上がる。グレムリンやキングコングはもちろんのこと、三体しかいないマトリックスのエージェントスミス、視力がやたらいいだけのロードオブザリングのサウロン、死の呪文ではなくやたらウィンガーディアムレビオーサを連呼するヴォルデモートなど、各キャラクターをいじる角度もまた絶妙。

それでいて素晴らしいのは最後にレゴだからこその想像力・創造力に満ち満ちた展開を今回も用意しているところだ。「ダークナイト ライジング」でも見所となった橋が爆破されゴッサムシティが孤立するエピソードにオマージュを捧げるかのように、しかもそれを各キャラクターがノーサイドで人橋となり、繋ぎ合わせることで食い止める。ビジュアル的には馬鹿馬鹿しくも見えるが実に感動的なシーンだ。

バットマンシリーズの中でベスト3を決めるのであれば、バートンの「バットマンリターンズ」、ノーランの「ダークナイト」、それらのタイトルに本作が並ぶことに全く違和感がない程の傑作だと思う。
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