KnightsofOdessa

女神のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

女神(1934年製作の映画)
3.0
No.87[中国版『ステラ・ダラス』] 60点

スタンリー・クワンが『ロアン・リンユィ 阮玲玉』で彼女に言及したことで存在が知れ渡った1930年代中国の無声映画。一人で息子を育てるために売春婦として働いていた女性が、ガサ入れの際に偶然隠れてしまった家の家主のチンピラに寄生される話。当時の上海は世界的に娼婦の数が多く、主人公と同じような境遇の女性たちが多くいたらしい。息子が成長して学校に行かせようとしても、周りの親たちが"娼婦の子供なんて穢らわしい"みたいな理由で退学させられ、それに反対した校長も一緒に辞めさせられる展開も辛い。それよりもチンピラの物理的な圧が凄い。

女性はチンピラから必死になってお金を隠すのだが、その駆け引きのラストミニッツレスキューばりの緊張感が素晴らしい。最初は棚の引き出しに隠すのだが、チンピラの頭越しに女性が棚を大切そうに叩く"サイレントあるある"なオーバーな演出があり、チンピラはその音を耳ざとく聴きつけて金を回収する。二回目は壁の穴に金を入れるのだが、チンピラが帰ってくるのとレンガを戻すのをクロスカットで描き、戻し終わるのと扉を開けるのをワンカットで決着させるのに驚かされる。チンピラに向けて女性が瓶を振りかぶる短いドリーショットも良い。

"刑務所の檻の中で、息子の明るい未来を思い描いたとき、彼女は初めて平和を見出した"という結びの言葉が重すぎる。この母親神話的な感じ、とても『ステラ・ダラス』っぽい。
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