HicK

リトル・マーメイドのHicKのレビュー・感想・評価

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
4.0
《ハリーのための作品》

【彼女あってこその】
初めてYouTubeでハリー・ベイリーのPart of Your World (ディズニーランドでの生歌)を聞いた時は、めちゃくちゃ感動した。実写版で1番美しい声。実力最優先の納得のキャスティング。日本語吹き替え版も実力派揃いだけど、これこそオリジナル版で見ないと今作の意義がない。話す声もキレイで引き込まれた。演技も良かったと思う。本国も日本もディズニーは新人キャスティングが上手い。

【メリッサ】
メリッサ・マッカーシーも良かった。彼女の特性を考えると少し心配の種になってたけど、今回は完全におふざけを封印して好演。結果的に彼女のキャリアの中で1番魅了された演技だった。

【好きなシーン】
徐々に惹かれ合うアリエルとエリックの過程が追加されていたのが良かった。マーケットでの2人が微笑ましい。そして、今作のラストカットは120点をつけるぐらいに好きだった。「人魚は涙を流さない」の冒頭に対してラストの涙と人魚たちと人間たちの見送り。ウルっとした。欲を言えば、あの人魚のモブたちに序盤でアリエルに関するネガティブな世間話をさせてたら、もっとラストの見送りに感動したかも。

【その他】
アニメ版のジョディ・ベンソンが出てきた時は嬉しかった。しかもカミスキーと絡めてきて、いいカメオ出演。

【ただ、長い】
たぶんアニメ版から50分ぐらい長くなってるんだけど、個人的には無くてもいいシーンが6-7割ぐらい。特に序盤のエリックの曲は長いし情熱的過ぎるし…。数秒しか会ったことのない女に対して(しかも意識朦朧の中)、あんなに魂燃やして熱唱するか?笑。

【自分が思う"お下がり"起用】
今作のハリーの起用は素晴らしいが、白人キャラを黒人に当てがう"お下がりキャスティング"はもうそろそろ辞めたほうがいいと思う。誰も得しないし、一周回って失礼にも感じる。元を辿れば"「子供たちの憧れにまで干渉してしまう大人たちの歪んだ人種感」を非難するディズニーからの再教育"なんだけど、大きく見ればもうその辺は柔軟になってきたと思うし、これからはオリジナル作品で(かつ優秀な脚本と魅力あるキャラで)色んな人種を輝かせて欲しい。

そのために「リメイクシリーズ」もそろそろ潮時かな。今作のフランダーとか「ライオンキング(2019)」を見ると「やっぱりオリジナル版がいい!」とか思ったりもする。(シュールさは好きだったりもするけど、意図されたものでは無いと思うし…)。

【総括】
尺が少し気になった以外はとても良かった。「ハリーのための作品」これに尽きる。歌声が素晴らし過ぎて、なんなら「レ・ミゼラブル(2012)」のように生歌収録で見てみたかったとすら思う。素晴らしかったです。
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