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婚約者の友人のhynonのネタバレレビュー・内容・結末

婚約者の友人(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

単なるどんでん返しだけじゃない。あっと驚く展開から、さらに物語は続き意外な結末へ…。フランス映画らしい、ひとくせもふたくせもある、大人のための極上のミステリ(仕立ての人間ドラマ)。映像も格調高く美しい。

観ながら私が思っていたことを、途中で神父さんが代弁してくれた。嘘をつくのは悪いこと。だけど、人を思いやって愛や善意から出た嘘は許される、と。死んだフランツの両親と、彼を殺したアドリアンの双方に嘘をついて、誰も傷つけまいとしたアンナは立派だし、その秘密の重荷をひとりで背負うことを選んだ彼女は強い。

そもそも、アドリアンは真実を言うべきじゃなかった。真実は時にとてつもなく残酷で、人を傷つけ不幸に陥れる。「私があなたの愛する人を殺しました。許してください。」と言われて、はい、わかりました、と言える人がいるだろうか?頭では、誰も悪くない、すべては戦争のせいだ、とわかっていても、感情が許さないだろう。アドリアンは、真実を告白することでただ自分が楽になりたかっただけだと思う。それは彼の弱さであり、無神経さ、身勝手さでもある。それでも、ピエール・ニネ演じるアドリアンはなんだか憎めないんだよな…。

登場人物それぞれの感情の描き方が素晴らしくて、様々なものがドロドロと渦巻いて、いかにもフランス映画らしい。余韻を残すエンディングもまた然り。
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