せぐうぇいX号

冷たい熱帯魚のせぐうぇいX号のレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
3.8
ようやく鑑賞。好みのジャンルとは言え、心に余裕がある時じゃないと絶対に観てはいけない作品。グロもエロもパンチが効き過ぎている。

本作の醍醐味と言うべきでんでん氏の怪演だが、後半の直球演技よりも導入部分の穏やかなパートにこそ彼ならではの不気味な村田像が表現されていると思うのは私だけでないはず。

例えば、娘の万引きで呼び出されたスーパーからアマゾンゴールドへ向かう時に村田が真っ赤なフェラーリに乗り込む場面。
親近感の塊のようなおじさんと地元スーパーのガラガラの駐車場。そこにあまりにも似つかわしくないギランギランの高級車。この違和感、アンバランスが村田の異常性に踏み込む第一歩となる。
(園監督が本作で赤のコントラストに徹底したこだわりを示しているのは言うまでもないが、“赤"の演出がすでにここから始まっていたと考えるのも悪くないのではないか?)

笑顔と狂気が表裏一体、紙一重で共存し、常に研ぎ澄まされたナイフを突きつけられているような感覚に襲われる怪演。最近では役所広司さんの『すばらしき世界』でも似た感覚を覚えたが、でんでん氏はあまりに"陽"が強すぎるお方であるがゆえにこの世界観とのミスマッチ具合が良い意味で際立つ。唯一無二の感覚とは常に意外性のうえに成り立つ。