せぐうぇいX号

孤狼の血 LEVEL2のせぐうぇいX号のレビュー・感想・評価

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
4.7
こんなに続編を待ち侘びた作品は久しぶりでした。
原作に無いオリジナルストーリーということで若干の不安もありましたが、個人的には前作のバトンを見事に引き継いだ名作だったのではないかと思います。
制作・俳優陣の皆さんお疲れ様でした。
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大上亡き後の呉原の治安維持を背負った日岡は、3年の間に組織抗争の鎮圧に成功。しかし故五十子正平の腹心であった上林の出所をきっかけに呉原は昭和に逆戻りすることに…。


本作のテーマは日岡秀一の負け戦と狼探し。

松坂桃李さんは舞台挨拶で"狼に育てられた犬"を演じるつもりと語っています。
新聞記者の高坂が日岡に放った言葉が印象的です。
大上は泥を被ることをわきまえて治安を守っていたが、日岡のやり方は言ってしまえばダークヒーロー気取り。
本物の狼はやはり日本から消えてしまったのか?

前作で学士様と呼ばれていた面影はどこへやら。ベンツを派手に乗り回す半グレ刑事と化した日岡だが、孤狼のライターを見つめる瞳に見え隠れするのは亡き大上刑事から引き継いだデカ魂。
最高の演技でした。


役所広司から主役の座を引き継いだのは松坂桃李ですが、やはり本作の異常性を最も代弁しているのは鈴木亮平演じる上林です。

触れたものすべてを傷つけてしまうのではないかと思わせる凶暴性と冷徹な目。
(あとあの耳、鈴木さんの自前なんですね。)
まさに日本映画史に残る悪役と言えるでしょう。
感情の緩急転換の加速度が尋常ではなく、この人は人間的におかしくなったのではないかと本気で思ってしまいます。役作りの徹底ぶりが伺えます。

上林の少年期が一部描かれますが、なんと上林の生家ロケ地はあの豚小屋の真横という衝撃。
ちなみにお二人の映画共演は『ガッチャマン』以来。ちょっと穏やかな気持ちになります。笑
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本当は主要キャスト全員にコメントしたいくらい、すべてのキャラクターに魅力が溢れていました。

パンフレットを熟読しましたが、「LEVEL3」の実現可能性はわりと高いような印象を受けました。
日岡が本物の狼を探したその先にある世界を、いつか見せてほしい!

ps. 広島市作成のデジタルロケ地マップおよび呉市観光案内所発行のロケ地マップを参考に、前作も含めたほぼ全てのロケ地を巡ってきました。現地の方々が共通して仰っていたのは白石監督のこだわりの強さ。撮影入り半年前からロケ地候補を念入りに調査し、昭和の"匂い"を最も感じられる場所を厳選されたとのこと。
前作のロケ地はかなり無くなっていて残念でした。呉原東署は建て替え、大上が放火した旅館は更地に、ピエールさんの本拠地はマンション建設中、真木よう子さんの密会場所の喫茶ぶらじるは2021年3月に廃業。たった3年でもいろいろ変わってしまいますね。行かれる方はご注意を。