せぐうぇいX号

カセットテープ・ダイアリーズのせぐうぇいX号のレビュー・感想・評価

3.8
70年、80年代の海外音楽シーンの空気感を知るにはこういう映画を観るのが一番だと思う今日この頃。

『ノーザン・ソウル』の10年後、『シングストリート』とほぼ同時期の時代設定。
国民戦線が台頭し過剰なナショナリズムが横行する英国ルートン。
パキ野郎と呼ばれ日常的に差別を受けている移民家系の少年が、10年前に爆発的ヒットを遂げたブルース・スプリングスティーンの音楽に衝撃を受け、詩の才能を開花させる。
激動の時代に揉まれながら、人種の壁や家族との軋轢に悩み苦しむ末、ある一つの答えに辿り着く。



チャーダ監督自身がインド系のイギリス人であり、かつブルースの大ファンであることは本作のもつ強大な説得力の由来とも言える。
歌詞を可視化する演出など、映画ならではの演出が観ている側にとっても心地よい。


ライブチケットをレコードショップで手売りするシーンや国民戦線の描写など、当時の文化や政治的背景をリアルに感じられる工夫、これも映画ならではの魅力。