てっちゃん

冷たい熱帯魚のてっちゃんのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
4.0
園子温初鑑賞。
園子温は不届き者という認識と、有名だという認識しかなく、これまで一度も触れてこなかったし、これからも触れないだろうと思っていたけど、敬愛する高橋ヨシキさん初監督作品が、近々上映されるってことで、ヨシキさんも共同脚本に携わったってことで、こちらを鑑賞。

映画鑑賞するにあたり、犯罪を起こした人物がいようとも、映画とそれは切離して作品として観ようと心掛けたが、どうしても事件のことを匂わせるような描写(エロスを性処理として(アダルトビデオのような感じ)撮られているのが非常に気持ち悪かった)の数々があった為、そこの切り離しが完全にはできなかったものの、本作の異常な熱量というか、異常な力に圧倒されてしまった。

だから、ここからは作品についてのみ言及していく。

おすすめして頂いた方によると、園子温という人物のナルチシズム溢れるアート表現が本作は抑え目なようだから(実際に見ていて、これがそのアート性か!というところはあれど、そんな鼻につくことはなかった)、とりあえず本作が入門作品みたいな感じなのかも。
その辺の薄れ度合いはヨシキさんの影響もあったのかも。

エロ、グロ、トラウマ作品、、いろいろ言われているようだけど、本作は暴力そのものではないでしょうか。
暴力の悲惨さとか、何も解決しないとか、そういうメッセージ性なんて、まるでなくて、純粋な暴力が描かれている印象。

暴力とは”伝染”するものだと思っており、本作でも”伝染”している。
その暴力が振り切ってやり切っているので、一種のカタルシスを生んでおり、そこに人間の欲がぎゅっと凝縮されていて、それがはじけ飛ぶとき、暴走するとき、目撃したとき、”伝染”したとき、私は恐怖を感じたし、快感を感じたのも確かである。

正直に言うと、本作に出演している役者さんたちを1人も存じ上げなかった。
皆さんが言う”でんでんがこわい”という言葉は劇中で♪でんでんでんでん♪みたいな音楽が要所で流れているのかと思いきや、役者さんの御名前だったとは!

そのでんでんさんが畜生道まっしぐらって感じが実に痛快であり、人たらしの面白いおっさん風だけど、少し入り込むと気持ち悪さが我慢できなくて、人を思うようにコントロールしていく様は、人の形を成した”なにか”である。
「しゃもとー!!」の呼びかけは、自分の名前じゃなくてもびくっとしてしまう。

その社本を演じる吹越満さんも素晴らしかったな。
普通にそうに見えるけど、既に壊れてかけている男が徹底的に壊されて、伝染され(社本の場合はもともと体内にあったものが増殖した感じ)、”暴力”になり、自分の幸せを求める、という一連の流れを淡々とだけども染まっていく妙がすごい。

脇を固める方達も素晴らしく、特に黒沢あすかさんが本当に良かった。
ああ、こういう人なんだ感がみた瞬間に分かる感じ、暴力に支配され求めて嫌っていた人物を熱演。

印象的なのは食事シーン。
冒頭と終盤でこの印象的なシーンがあるのだけど、ぞくぞくした。
このシーンだけで物語になっているし、背景も見えてくるし、今後この一家は”良く”はならないだろう感がすごいのなんの。

いろいろと言われる作品だし、確かに不快感(生理的に受け付けない系のやつ)がすごいんだけど、それに並ぶくらいに狂気に溢れていて、並みの作品でないことは確かだなと感じました。
てっちゃん

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