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ザ・デクラインIIIのblacknessfallのレビュー・感想・評価

ザ・デクラインIII(1998年製作の映画)
5.0
このタイミングで本作のレビューをあげるとなると、数人いるアンダーグラウンド・シーンを追ってるパンクスのフォロワー方はお気づきでしょう。
そう、行ってきましたよ、final conflict Japantour💨 しかも東京2公演。
USHCでは珍しいストレートなディスチャージ直系のスラッシーでタイトな演奏に強硬なポリティカル・アティチュード全開の歌詞。これぞハードコアって感じでサイコーだった🤩
ボーカルのロンとギターのジェフにミーハーにも2ショットをお願いしたら快く応じて貰えて嬉しかった😆

本作に出てるバンドを観るのはfinal conflictは2バンド目で2019年にNAKED AGGREGATIONも観ている。

2バンドとも世間的には無名に近いバンドなんだけど、本作に出てくるバンドの中では間違いなくビッグネーム。
デクライン・シリーズの3作目はL.A周辺のアンダーグラウンド・パンク・シーンに密着したドキュメンタリー。2が当時、イケイケだったメタルシーンだったのに比べると本当にマイナーでよく商業映画にできたと思う笑
なので本作は80年代初頭の西岸海のパンクシーンを切り取った1の続編的意味を持つ。
1はGERMSやBLACK FLAGが出てるから豪華なんだけど、彼らがまだローカルな存在の頃に撮られてるから撮られた当時はかなりアングラな作品になる。

1から約15年後の90年代半ばの西海岸のパンクシーンがどうなったのかを廃屋にスクワットして生活してる、ガター・パンクスと呼ばれる若者数人のライフスタイル、彼らから見たパンク・シーンの現状、社会と政治との距離感等が描かれる。
熱心なハードコア・パンク好きにはとても興味深い内容になっている。でも、本作は前にレビューした『アメリカン・ハードコア』のように包括的に当時のシーンやバンドがわかる作品ではない。ガター・パンクス的なライフスタイル自体がこの当時のパンク・シーンでは極少数派だし出てくるバンドも本当にオブスキュア過ぎる笑 なので知らない人が見ると誤解されてしまう可能性が高い。
象徴的なのが「最近パンクはどうなの?」と聞かれたあるバンドのメンバーが「偽物は流行ってるぜ、本物はぼちぼちかな」と答えるシークエンス。
ここで言う偽物は当時流行っていたグリーン・デイやオフスプリング等のメロコアとタフなニューヨークハードコアにメタルのヘヴィネスとスポーティーな感覚を取り入れたニュースクール・ハードコアのバンド群(一番売れたのはV.O.Dかな?)のことを指している。

詳しい方からはあまりに雑な解釈で怒られそうだが、当時一般的な意味で売れたパンクやハードコアはこの2つなのは間違いない。本作の主役であるガター・パンクス達はメロコアやニュースクールをパンクと認めていない。
先にガター・パンクスは極少数だと書いたが、彼等のように上記2つをパンクと認めないパンクスは世界中のアンダーグラウンドにいた。自分もこの当時オールドスクール系のバンド組んでいてアンダーグラウンドにいたのでその空気感はよく知ってる笑
あれらをどこまで認めるのか?侃々諤々の議論があった。メロコアでもあのバンドはいいけど、あれはダメとか、まあ、知らない人から見たらどうでもいい話だね笑 スタイルじゃなく個々のバンド見ろよって思うよね。と今は悟ったように言ってるおれもニュースクールには否定的(今は好き♥️)だったし、メロコアは実は好きなバンドが幾つかいたけどおっかないパイセン・パンクスに怒られるのが怖くて「あんまよくわからないっすぅ」とか言って自分を偽ったりと、オールドスクール・パンクスはこの2つには色々揺さぶられたんだよ笑

そんなわけで本作は当時のアンダーグラウンド・パンク・シーンの世界の共通意識みたいなものは正確に写し出してる貴重なドキュメンタリーだと思う。
こうやって書くとメロコアとニュースクールの時代だったのかと誤解されそうなので言っておく。これはあくまでチャート系の世界の話で90年代はアンダーグラウンドからもオールドスクールのスタイルを継承発展させたり、または加速強化させた個性的なバンドが世界中から出現した時代だった。特にアメリカは凄かった。読むのがいやになるほどバンドをあげられるけど、そんなことをしても意味がないのでバンド名は割愛するけど本当にそうだったんだよ笑
興味がある人はコメ欄で聞いてね😘

Final conflictとNAKED AGGREGATIONを観れたことで特別なドキュメンタリーな本作だけど、自分にとって特別なのはそれだけじゃない。
本作が数年前に新宿シネマカリテで上映された時にTwitterに書いた感想をライブハウスでよく会う人が褒めてくれて、「自分も観たくなりました」と言ってくれた。
彼はおれより4才年下だけどロック、メタル、パンクとそこそこのマニアであるおれよりもどのジャンルも詳しかった。そしてそれを鼻にかけることもしない謙虚な人柄で常におれを立てて接してくれていた。おれは自分より詳しくないパイセンに会うとついつい遊び半分でマウント取ってからかう悪癖があるので、彼のことを尊敬していた。本当に何でもよく知ってて話もうまいからライブハウスで会うと話しかけずにはいられなかった。そんな性格なので友達も多くライブハウスではいつも誰かと親しげに談笑してた。
博識で趣味のいい彼に本作のレビューを褒められてとても嬉しかった。彼に刺さったレビューを書いた自分が誇らしかった。
だけに、彼が2年前に急逝してしまったと聞いた時はショックだった。しかも、亡くなる2年前ぐらいはちょっと疎遠になっていてライヴでも会ってなく、Twitterでも話してなかった。だって死ぬなんて思わないじゃん。年下なのに。
彼が本作を観たのか聞きそびれてしまった。観てくれたんだろうか?
Twitterで最後に話したのはグラムロック界の珍品として一部で名高いアルヴィン・スターダストのことだった。「流石は物知りのblacknessfallさん(Twitterでは別名だが便宜上)ですね」という彼のリプで会話は終わっていた。いかにも彼らしいと思った。自分の方が数倍物知りなのに。

そんなわけで本作は色々な想いが駆け巡る作品になった。
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