チッコーネ

サマリアのチッコーネのレビュー・感想・評価

サマリア(2004年製作の映画)
3.0
『春夏秋冬、そして春』の次、監督が最も充実していた時期の作品で、演出や撮影、そして美術などにかつての不自然、ぎこちなさは見当たらない。
ロケ場面が大半を占め、地方都市の雄大な自然から、ソウルの雑多さまでを感じさせてくれる。
ラブホテル駐車場の目隠しが風にたなびく場面、少女の顔に砂利をかぶせる場面を始め、美しく幻想的な画も多い。
若者の未熟を敢えて車で表現するという演出はありそうでないし、束縛からの逃走を『窓からダイブ』で図る少女の姿には、諦念を土壌に育まれた破滅的楽観の凄みあり。

しかし作品に反映された監督の女性観や倫理観は、混乱気味。
『少女を買う男』への制裁を繰り返し描きながら『春を売る少女』は無条件に赦すというスタンスに、女性や処女、そして家族へ向けられた単細胞の独善的な理想や盲信が透け見える。
こうした人物が裏切り・挫折を経験すると、現実の行動にセクハラが現れるものなのだろうか…、晩年は韓国映画界を追放されていたしね。