真田ピロシキ

美しい星の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

美しい星(2017年製作の映画)
4.0
ある日突然、父が火星人、息子が水星人、娘が金星人に覚醒した家族。母は地球人のまま。これを言葉通りに受け止めるのではなく何らかの比喩だろうと思っていたのだけれどシックリくる解釈がなかなか見当たらない。各人が社会に抱いている疎外感を異星人として表しているのかと最初は思っていたが、それだと地球人の母親が腑に落ちない。では父と息子の世代間ギャップだろうか?実際に台詞でそうとも取れることを言っているものの、これでもやはり娘が蚊帳の外なので納得しかねる。

終盤になってやっと合点が行った。これ家族間の隔絶なんだ。冒頭の全く噛み合っていない食事シーンに始まり、母がどう見ても詐欺商法の水を家中に積み上げていても無関心。フリーターの息子がまともな(?)就職をしていたことにも気付かず、娘は妊娠、父は浮気してた上に大病と違う星の住人のようにお互いが見えていない。そんな異星人家族が一つの目的のために心を結束して感動的な美しい結末に向かう。…ところで梯子を外される。これは予想してなかった。やられたね。この安直に御涙頂戴なんかしてやるもんかという意気込み好きですよ。

そんな感じで自分の中で消化出来たものの、あの水星人は結局何なのとかエレベーター射殺ループの意味とか分からないことは残ったまま。人によって色々解釈が出来て理屈好きなら楽しめる作品。演出面でも火星人リリーフランキーのヒートアップする温暖化警鐘気象予報や金星人 橋本愛のUFO交信シーンなどトランス感があって飽きない。地球の歪んだ美しさを正す美の使者に橋本愛というのが説得力抜群だ。確かにあの美しさは地球外的。リリーフランキーが火星人なのも疑問に思わないが、亀梨和也は水星人と思えなかったかなあ。そこはもっと水星人っぽい配役をして欲しかった。

三島由紀夫の原作からはかなり脚色してるようなので原作も読んでみたい。