しろくま君

さよなら、ぼくのモンスターのしろくま君のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

なぜかすごくグサグサと心に刺さった。

恋愛の方の展開も人生の方の展開も読めそうで読めないところが面白かった。

結構、恋愛の方に関しては相手役の反応が珍しいというか、ズルい様に見えて、1番理想的なものじゃないかと思う。成就しない恋愛で1番好きかもしれない。キスシーンが美しい。

オスカーとワイルダーが同じベッドに寝て、ワイルダーがオスカーに近づこうとした時「キスをしないで、今を汚したくない」とオスカーが墓穴を掘った時の「水をとるだけだよ」というワイルダーの顔が美しすぎる。そして、そこから振るのでもなく、彼が生きやすいように導いてくれるの優しすぎる。気持ちがないのにキスをすることが残酷じゃないのがすごい。ワイルダーはただただバイだったのかもしれないけど、オスカーのコンプレックスを初めて受け入れてくれた人間。

キルユアダーリン好き人間なので、好きな人がノンケと知ったあと、見知らぬゲイと悲しみながらセックスするシーン好き。

ただただLGBT映画として観てたので、マザーコンプ、ファザーコンプの描写の方が強いことにびっくり。統合失調症の描写は軽くはあったものの、吐血や杭やイマジナリーフレンドが強く記憶に残る。ハッピーボイスキラー以来のイマジナリーフレンドものでした。

展開が読めなかったのは、家族のあり方が話が進むにつれて実は全然違うものだったからだと思う。最初は母親が悪者で、父親は優しい人間に見えてたが、ラストではそれはまったく逆になっていた。どちらも悪いとか悪くないとかはないのかもしれないけど、それが映画を面白くしていた。マザコンもファザコンもあるの鬱だな。

オスカーは母に気持ちをぶつけられてよかったし、母も変な慰めをしていなくて良かった。

ハムスター殺すと思わんくて突然の鬱やめて欲しい。でも、イマジナリーフレンドとの卒業はオスカーの大人への道に続いてるのかもしれない。ただ、ハムスターが死んだということを告げず、4匹も新しいものを迎えてくれた両親の愛情は好きだな。そして、4匹も変わってる伏線が、バディをメスだと思っていたのに、本当はオスだったことに繋がると思うと興奮する。あの描写は、オスカーのジェンダーに対する自分の気持ちの表れだと思っていたし、実際それもあると思うけど、それ以外の伏線を作るのがすごい。そして、バディが車の中に閉じ込められたあと、咳払いをしながら声を男性から女性に変えて「ジェンダーがこんがらがった」って言うシーンが好き。

映画としての展開は100点だし、内容も個人的には好き。子供は弱いし、大人も弱い。誰だって弱いから強くなるしかないんだ。