kyoko

さよなら、ぼくのモンスターのkyokoのレビュー・感想・評価

3.8
カリコレ12本目(たぶんこれが最後)

原題「CLOSET MONSTER」
邦題と「恋だと、気づきたくなかった」というコピーは完全にミスリードだった。
自分の性を自覚しつつあったときに出会ったちょい悪色男(=モンスター)との恋愛ものかと思ってたよ……とんだモンスターちがい。

これは父の呪縛から逃れようとする息子オスカーの葛藤と成長の物語だ。
ハムスターにしろ、風船にしろ、一見父親の深い愛情のように見えるが、それは息子への自分本位な執着に過ぎない。オスカーもまたそれらに依存しながらも徐々に膨れてくる父親に対する嫌悪をもてあまし、さらには子供のころに目撃した暴行事件のトラウマから、自分自身の性を解放することができないでいる。
今の自分から脱却するには精神的に父を抹殺する必要があった。
切ない恋は、その背中を押すきっかけになったに過ぎない。

幻覚の描写がグロくてホラー風味な点はあまり好きじゃないけれど、LGBT特有の感受性の強さとか繊細さに若さゆえの無邪気さもあって、ドラン(と比較するほどドラン通じゃないけど)よりも息が詰めずに観ることができた。
ただ、音楽は好みだけど、この作品にはこの音楽じゃないなっていう気がして、最後まで違和感が残ってしまったのが残念。
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