jonajona

透明人間のjonajonaのネタバレレビュー・内容・結末

透明人間(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

広告通りの心神喪失の2時間!

モラハラ×透明人間!!
モラハラ夫によって主人公の頭がおかしくなったのか、それとも狂気のモラハラ夫が本当に透明人間なのか?まだ判りづらい前半の発狂寸前のヒリヒリ感から、ついにハッキリと姿を垣間見せ怒涛の勢いでストーキングが炸裂する後半の絶体絶命の戦い!
古典的な透明人間という題材を用いてここまで王道な面白さを現代に持ち込めるのすごい。

冒頭のopeningまでの
シークエンスが素晴らしい。
言葉では一切の説明を行わないまま、彼女よ表情と行動、通る部屋の異質さだけで、彼女の夫がとんでもなく束縛の強いモラハラ夫だったろう事がヒシヒシと伝わってくる。加えて大富豪であり力を振りかざす人間だという事も。
本作の全編に通底するこの描写力。絵的にキャラと感情を伝えてくる。まさに映画的な脚本と映像のマジック。

透明人間の夫のキャラクター性も見事。どこまでも一貫して自分を優位に持っていき、主人公を追い詰める。執拗に彼女を求めながらも傷つけ続ける悪魔的存在ながら、『モラハラ』という現代的問題意識が彼の存在感にリアリティを与えてる。

透明人間なんて『ありえないもの』を理解されず孤立無縁で恐怖し続ける主人公の姿と葛藤を通じて、モラハラに対しての周囲からの理解出来なさを追体験させられる。これこそ物語で現代的恐怖を取り扱う誠実なストーリー。viva・ホラー!viva・透明人間!!

ラストは納得のこれしか無いという透明人間返しエンドで、彼女によってモラハラ夫にもたらされるのは主人公がこれまで感じていた『誰にも理解されない』という恐怖!
お前の事は何でも知ってる、見てるぞ、という夫に対する最強の仕返し!!
そして、終盤まで主人公の苦しみを理解出来なかった警察官の親友が一連のそれを見届ける…ここまで含めて完璧。犯人と同じ男でありながら彼女を守りたいと思っていた。ラストにまで理解の超え難い壁を余韻として強烈に残す。その結果物語内だけでは片付けきれない、現実世界に地続きの問題意識が放たれる。

古典的ホラーからここまで傑作が現代に甦るとは…感動しました。
追記)本編無関係であるけども。透明人間という要素を除けば視点は逆側になるのですが、『トリコロール白の愛』と物語の骨子が同じで何やら面白さを感じました。大富豪が自分の死を偽って愛妻を呼び戻そうとする話、白の愛で描かれた『愛の平等』のテーマを裏側から描いたようだなと。
白の愛では、死によって彼を愛していたことに気付いた妻が戻ってきて彼は彼女を疑獄によって自分の手中に収めることに成功しますが空しい涙を流してエンド。
本作では死を偽りストーキングしてでも所有下におきたかった彼女の心だけは永遠に手に入らない…というエンド。描かれる立場や選択肢(ジャンル?)が違うだけでこうも印象が変わる面白さ。
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