シノミー

3月のライオン 前編のシノミーのレビュー・感想・評価

3月のライオン 前編(2017年製作の映画)
4.4
生きるために戦う。将棋に全てをかけた男の物語。
執念。意地。矜持。
責任。愛情。諦め。
後悔。迷い。束縛。
これほどまでに将棋が熱く、熾烈なものだと僕は認識していただろうか。
三月のライオンは、アニメをきっかけに初めて知った。
実写と比較してしまうのは悪い癖だし、別のものと捉えるべきなのかもしれない。
だけど、この作品はその本質を見事に表現していたと思う。
あの葛藤、あの熱意を。
この作品の好きなところは、こんなにも明るく、希望に満ちた世界を、時に、これでもかというほど残酷に表現するところだ。
2時間20分という限られた時間の中でそれがよく伝わった。
この作品の登場人物は皆、もがき苦しむ。
表向きは明るく振る舞うが、その内面はドロドロで、今にも崩れてしまいそうな者たちばかりだ。
努力しても報われない者。
他人に家族を壊された者。
期待に応えられない者。
あと一歩で及ばない者。
大切な人を失った人。
絶望し、現実から逃げる者。
挫折を味わった経験がある人ならわかるはずだ。少なくとも僕には痛いほど伝わった。
追い詰められて、追い込まれて、あとが無くなって、苦しみ抜いた末に何が待ち受けているのか。
幸せではない。
しかし、その道しかないのだ。
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