次男

3月のライオン 後編の次男のレビュー・感想・評価

3月のライオン 後編(2017年製作の映画)
4.1
戦う人たちの物語だなあと実感。戦う人たちって、棋士だけとかじゃなくて、みんな含まれてると思います。どんな理由で、どんな風に。「これはいい、これはだめ、を全部決めんの?お前神様なの?」だから、あくまでこれは、彼の物語として、彼の戦う理由と戦い方として。

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思えば前編は「戦うこと」を描いていたのかなあ。庇護の元、将棋は居場所をつくるための手段で、それ自体が目的だった零が、誰かを守りたいと思い、守る術を間違え、捨て、やはり掴もうとする。静かに劇的に本心を掴んでいく変遷は、まさに「大人になる」というか「強くなる」というか、そういう表現としてとても誠実な気がしました。

「大人の定義」を大声で叫んだ零くんは、きっと間違ってないんだろうけど唯一の正解とかではなくて、前編であふれていた川本家の暖かさがなくなったことはその「定義」の一部なのかなあと思ったり。あの暖かさは、守られる側のそれなのかも。(と思いながらも、最後にもう一度それを味わって締めくくりたかったけれど…とても気持ち良い空間だったから)

みんなどんな思いで生きてんのかなー。僕も大人になったぶってないで、こういうことをきちんと向き合って考えて戦わなきゃいけないなあと思いました。

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良い映画だったなあ、前編も後編も。実写化とか実現度とかそんなん忘れて、とても真っ当に観ることができたなあ。

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地味ではなく丁寧で、派手さはないが説得力のある映像。ルールを知ってる程度の僕でもエキサイトできる対局。嫌味も顕示欲も感じず、本当に素直に観ることができました。

神木隆之介さんは本当に適材適所で、彼の演じる零は見てるだけで泣きそうになりました。そして、前編では長女の倉科カナさんに惚れ、後編では清原果耶さんに惚れました。
『テラフォーマーズ』でトンデモ芝居をしていた伊藤英明さんは最高に素敵だったし、脇を固めた中村倫也さん・尾上寛之さんの存在感は清涼剤のよう。

ただ、個人的には、前後編通してのベストアクトはやっぱり奥野瑛太さんの「負けました」。あれはやっぱり素晴らしすぎる。

本当に悔やまれるのが、お父さんが伊勢谷友介さんだったこと。ぱっと見、倉科カナさんの元夫に見えるし、白髪をはじめとしたエイジングがとにかく浮いていて、ひとりだけ実在感の方向性がズレてた…。ほんと悔やまれる。さんざん有名俳優は出ているのだから、地味でも確実な役者さんにやってほしかったなあ…。

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ほんとに、散歩に行きたくなる映画だなあ。
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