TrueRy

マンチェスター・バイ・ザ・シーのTrueRyのレビュー・感想・評価

3.9
しみじみと良い映画。特別な何かが起きるわけではないが、少し寒さを伴う風景や、内面を描く優しさがよく伝わる、そして救いの映画でもある。

兄の突然の死から、その甥を育てる事になるのだが、その地はかつて、あまりにも辛い事故がおきた地でもある。

事故から、自分の罪として心を閉ざしてしまった男と、父を亡くしたものの、周りの生活は動き続ける甥とのすれ違いが続く。過去には楽しく釣りをする姿もあるが、そこも含めた対比が彼が経験した事の壮絶さを物語っている。

過去は取り戻せないが、向き合い、前に進む事はできる。少しネタバレになるが、その傷の痛みが少し緩和され、現実と折り合いをつける彼にホッとするとともに、最後の甥との2人のシーンには心温まるものがあった。また、同じく壮絶な経験をした彼女も、また被害者でもあり、加害者である事に苦しみ続けていた。彼らのこれからの人生に幸あれ。

映画的には、過去と現在のシーンをうまく行き交い、その対比とその理由、をうまく表現している。どこか牧歌的な所と、感情や心を表現しない彼を直接的に表現しない所が素晴らしい。

人は、過去を踏まえて、今の自分がある。
TrueRy

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