スティーブン・ジェラード、少し古いサッカーファンなら誰しも1度は耳にしたことがある選手だろう。長らくプレミア・リーグという最高峰のリーグにおいて、強豪リヴァプールを支え続けた、紛うことなき”キャプテン”として相応しかった彼のキャリアを振り返るドキュメンタリー。
私ももう40代半ばとプレミア・リーグ歴が長くなったのもあり、映像にでてくる歴史や選手が懐かしすぎて、まずその面だけでも楽しみが増す。そして彼が所属したリヴァプールにはもう一つのクラブ、エヴァートンがあり、私はそのチームを長年おいかけており、その意味で2重に楽しめる作品だった。
鑑賞後、私に渦巻いた大きな感情は”うらやましい”という気持ちと、彼の街やクラブに対しての忠誠心の大きさ。うらやましいのは隣接クラブのファンとしての思いなので分かりづらいのではぶくが、彼が歴史あるクラブで若くから期待され、その期待に実力で応え、そしてキャプテンとしてチームを支える姿、その中での栄光と挫折、掴みきれなかったものの大きさ、がうまく描かれている。そして彼の誠実さと、そのひたむきな誠実さゆえに彼が苦しむことになる重圧と歴史、そして期待、がここまで彼にのしかかっていたとは当時、知るよしもなかった。それゆえに、彼の立ち振舞いや姿勢、多くを物語らない彼の姿に感銘を受ける。
プレミア・リーグや、ジェラードの名前を聞いたことのある人はぜひ見てみてほしい。イングランド、そしてリヴァプールにおけるフットボールの歴史と重みに触れるだけでも、プレミア・リーグに対しての見方が変わると思う。
個人的には、エヴァートンにも彼のように街、ファン、クラブから長らく愛される選手がでてほしい、その思いがより強くなった。
余談だが、Mr.ノーバディーの挿入歌に使われているのがリヴァプールが試合前に流す”You'll Never Walk Allone”。曲の出自は詳しく知らないが、スタジアムで彼らが合唱する姿は迫力と美しさ、そしてチームとしての歴史を感じる素晴らしいもの。この曲を聞くと情熱を呼び起こすという文化を持つ彼らに敬意を表します。