シネマJACKすぎうら

菊とギロチンのシネマJACKすぎうらのレビュー・感想・評価

菊とギロチン(2016年製作の映画)
4.0
まだ階級社会の色濃い大正末期、実在した過激派政治結社の面々と、"女相撲"で巡業生活をおくる女性力士たちとの交流をとおして描かれる青春群像劇。

映画の序盤、まるで大学サークルのようなノリでジャレあっているかに見えた"ギロチン社"の活動家たち。そして、そんな彼らが実は人殺しも辞さない過激な連中だったという衝撃。

さらには、酷いばかりの女性差別や人種差別にさらされた挙句、藁をも掴む思いで"女相撲"に活路を見出そうとするウラ若い女性たち。
彼ら/彼女たちが一種のシンパシーを感じ合い、いつのまにか行動を共にしていく流れにも、全く違和感をおぼえない。

鑑賞前、、本作のタイトルから"どこかトリッキー"で"ケレン味たっぷり"の雰囲気を感じた。ところが本編では、凄惨なまでの"リアリズム"が、躍動する若者特有の"みずみずしさ"で語られていくのだ。
そして、、
アナーキスト(無政府主義者)を標榜し、過激に振る舞う主人公たちの姿が、儚くも意外にみずみずしく、我々の目に映る。さらには、彼らと対峙する"体制"側キャラクター造形の繊細さも見事。

これらは結局、、それぞれのイデオロギーや価値観に関わらず、観る者をこの物語に引き込んでいく為の工夫とも言えるのではないだろうか。

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https://youtu.be/shScZzsewVs