スプリングス

イレブン・ミニッツのスプリングスのネタバレレビュー・内容・結末

イレブン・ミニッツ(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

〈/この物語は“function”である/〉

【Introduction】
この、“現実”
この、“人生”
この、“自分”
昔から、どこかの誰かが書いてる脚本なのだと、なんとなく感じていたこの世界。
幼い頃から感じていたこの違和感。
自分は映画の脚本の登場人物のひとりにすぎないのではないかというこの不安。
ある脚本家の気まぐれにより生まれた、インサートカットのみに登場するような、“通行人A”。
決められた役割を、敷かれたレースの上を、ただ生きるだけの毎日。
そんな存在。
そんな存在。
僕は自分が見捨てられたことを知っている。
脚本の進行に必要のなくなったキャラクター、、しかし、一度登場させてしまったのだから仕方なく登場し続けさせられている、そんなキャラクター。
僕は、そんな存在。
僕は、こんな存在。
...脚本家は恐らく、そろそろ僕を退場させようと考えている。
伏線の張りかたやフラグ的発言から考えても、僕の人生はあと少しで終わりを迎えるだろう。
だから最後に、これだけは言わせてほしい。
────次回作に、ご期待下さい。

【Review】
ある出来事に遭遇する、ある11人の、それぞれの11分間を描いた群像劇...てなスタイルの今作。。
なるべくネタバレ無しのレビューをこれまで意識してきましたが、これは語らざるをえない、、、ので、ここから先はネタバレ有りの文章になります。あらかじめご了承ください。

....みなさんは脚本、または小説などの《物語》を書いたことはありますでしょうか?
僕はあります...てか自主的に書かなくても学校の授業で書かされるんですけどね、笑。
書かれたことのある方なら分かるかと思いますが、物語を作ることは非常に難しいです。大まかなプロット、登場人物の人数・役割・名前、この物語で伝えたいテーマ、タイトルなどなど、エトセトラエトセトラ、、それら全てを決めて初めてスタートラインに立てるような、そんな途方もない作業。
だから必然的に、完結しない作品が生まれます。
理由は色々...『辻褄が合わなくなったまま書き進めて取り返しがつかなくなった』や『ここから先のアイデアが出てこなかった』、もしくはただ単に『飽きた』だけかもしれません。それは人それぞれです。
今作『イレブン・ミニッツ』は、そういった作品を無理矢理終わらせた映画なのだと、僕は勝手に思っています。映画の中にもそれを匂わせるシーンが幾つか、、。

◆映画のワンシーンその1
...老人がひとりで風景画を描いていたのですが、突然描くのをやめて片付け始めるのです。
その理由が《インクを一滴、紙にこぼしたから》なのですが、僕はこれがヒントだと思っています。

◆映画のワンシーンその2
...登場人物の何人かが気付くことになる《空に浮かぶ黒い点》、、ある青年は上記した老人の絵を見て、この黒点を描いたのだと勘違いします。

■このヒントふたつから分かること
...この映画は、“描くことを放棄された脚本”だということ


映画が終わって不思議に思いました。
あの意味深なシーンは何だったのか、、と。
伏線回収しねぇんだ、、と。
雑い終わらせかただったなぁ、、と。
そしてふと感じたのです。
『これは打ち切りだ!』、、と。
人気が続かず、途中で連載が終わってしまうマンガとかってありますよね?あんな感じです。
....脚本家という、その世界にとって神のような存在の“ミス”あるいは“気まぐれ”により、それまでの展開や伏線を一切無視して終わらせられてしまう物語、、その虚しさを今作は描いているのだと思います。

【digression】
未完結の物語を読み返すたびに申し訳ない気持ちになります。
彼らの時を止めてしまっていることに対しての謝罪の気持ちや不甲斐なさがつのります。
もっと文章力をつけて、彼らの物語を完結させてあげること。
それが今の僕の目標のひとつです。。