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淵に立つのpanpieのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
4.5
ずっと観たかった今作。
やっとレンタルされる事が分かり我慢できずTSUTAYAへGO!してしまいました!(ToT)
ずっとTSUTAYA断ちしていたので借りたかった新作が一週間レンタルできる様になって本当はまだまだ借りたかったけどこれでも抑えて借りまくってしまった!(^◇^;)
今作はまだ一週間レンタル出来なかったのですが珍しく我慢できず借りてしまいました。


なんて映画!
ダンナ役の古舘寛治が腹立つ!
前になんかのドラマで出演作を観たのですが同じ様な抑えた淡々とした演技で上手いのか下手なのか全く分からなく嫌悪感が募った。
ムカつくサイテー男!

奥さん役の筒井真理子さんが素晴らしい!
事の前半と後半が別人!
役作りの為の体重増減した女優さんて日本人にもいたんですね!
本当に別人でした。

そして浅野忠信。
あの目が笑っていない不気味な微笑み顔が今作も強烈な役どころでこの人しか出来ないハマリ役だった。
始終敬語で語り何処へ行くにもワイシャツスタイルで不気味さに拍車がかかる。
突然やってきて住み着く流れがあまりに自然で最初いい人を演じるし自分で服役していた事も包み隠さず話すし(ある一点を除いて)隠し事ばかりでなんの相談もなく事後報告の夫より妻の隙間に忍び込んでくる様が本当に自然で気持ち悪い程上手かった!
皆で行楽地に遊びに行った時の豹変した所がもう怖さのピークでした。
行楽地なのにワイシャツだしもう普通じゃないなって分かる。
カラスの鳴き真似が凄く上手かったし。笑
事が起こる前に仕事着であるツナギを上半身脱いで下に着ている真っ赤なTシャツが後々まで印象に残り目に焼き付いた。

意味不明な夫の言動がここで観ている側に分かり夫はこれからの流れを分かっているけど止めることができない。
ただ観ているだけ。
観終わって夫は八坂を家に招き入れた時からこうなる事が分かっていたかの様な夫の台詞に衝撃が走った。
この人は自分で悪くなって行く流れを分かっていて変えようとしない人間でありもしかしたら登場人物中で1番最低最悪の人間なのかもしれない。

章江が八坂に想いを募らせて行く所はゆっくりとしていてむしろ自然。
八坂が手紙を書いている所へ章江が一緒の部屋で娘の発表会の衣装を縫っていいかと聞くシーンはそれを物語っており完全に警戒を解きむしろ自分から寄って行く描写が次の展開を想像させ観ていてドキドキした。

後半はもう本当に辛かった。
早く終われ!とさえ思う程観ていて辛かった。
章江が執拗に手を洗うんだけどあかぎれになっても洗い続けていて悲しい過去から来る精神的なものだと分かって彼女の手を洗う所や除菌シートであちこち拭く所は胸が痛かった。
章江は八坂と最後の一線は超えなかったものの完全に夫も娘もこの時点で裏切っておりその後の生活は贖罪の日々だったのだろう。
絶対に娘に他人というか男を近づけさせたくない頑なな気持ちが伝わって来る。
顔から表情が消え太って時間の流れを体で表現していて観ていて痛かった。
何も変わっていない無神経な夫に観ている私も章江に共感して苛立った。
こんな夫とは別れたい。
ずっとそう思っていたに違いない。
でも娘がこんな状態でいる以上一人でここから離れるわけにもいかず離婚して娘と二人で生きて行く事も出来ない。
章江が蛍を散歩に連れ出して川を何度も眺めるシーンは彼女のこれからの人生を悲観している様子が痛い程伝わった。
もう章江目線だけで観続け疲れ悲しかった。

太賀くんがまた流石の演技でこれも彼しかこの役は思いつかない。
利雄に父親の話をする所は利雄の気持ちに共感した唯一のシーンかな?
太賀くんは何でかきょとんとしていたけど利雄が頬を張ったシーンも共感できたし逆に八坂の消息が分かるかもしれないと雇い続ける所にまた嫌悪感を持った。
太賀くん章江にそれを言ったらダメでしょ!
…あぁ、言っちゃった。
それを受けての章江と利雄のやり取りは何故もっと激しくやり合わないのかとも思ったけれど抑えている分に逆にかと言ってこうなってしまった事もこれから変えられない辛さを孕んでいて辛かった。


今作はあらすじは書きたくない。
私はまた親切なレビューに助けられ詳しく分からないまま絶対観ると決めてから今作のレビューを極力読むのを避けてきた。
それが良かったのだと思う。
ストーリーは想像を超えていた。
胸に刺さった。
苦しい。
未見の人は是非この恐ろしい巡り合わせを是非自分の目で確かめて欲しい。
蛍の弾くオルガンの曲が今でも焼き付いて頭の中に聞こえ続ける。
恐ろしくも哀しい映画だった。
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