こたつむり

ロスト・バケーションのこたつむりのレビュー・感想・評価

ロスト・バケーション(2016年製作の映画)
3.8
★ ねばぎば!

「ここで問題だ!このえぐられた足でどうやってあのサメから逃げるか?一つだけ選びなさい」

1.美人の主人公は突如反撃のアイデアがひらめく。
2.仲間がきて助けてくれる。
3.逃げられない。現実は非情である。

…なんて問題が脳裏に浮かぶ作品でした。
勿論、僕が同じ状況に陥ったら「3」と答えますね。それほどまでに過酷な状況。圧倒的な絶望感。なかなか見応えがある“サメ映画”でした。

本作を仕上げたのは、ジャウム・コレット=セラ監督。正直なところ、彼が手掛けた他の作品『エスター』も『アンノウン』も“しこり”が残る後味だったので、期待値低めで臨みましたが…。

それが良かったのでしょう。
90分未満の尺ゆえに、もたつかない展開。
グイグイと前に押し出してくるテーマ性。
娯楽作品として素晴らしい仕上がりでした。何よりも魅了されたのが海の情景。まさしく“天国”でした。

サーフィンの場面は別の映画を観た気分。
海街で育ったくせに海が苦手な僕ですら「楽しそう」と思える筆致は見事な限り。また、スマホの使い方も巧みでした。目の前の自然環境を見ずにスマホを弄る…そんな現代人を揶揄しながらも、物語の主題に絡める構成力もさすがです。

そして、何よりも重要なのがギャップ。
静から動。明から暗。物語の色が切り替わる瞬間。まさしく極上の映画を観た気分になれる演出でした。

ただ、あえて難を言うならば。
どうしても現実味に欠ける展開に陥ってしまうこと。そもそも、海岸線近くでサメに襲われる…そんな前提からしてツッコミどころ満載ですからね。でも、物語を構築する前提(本作で言えばサメの存在)を疑わないのが映画を楽しむコツ。積極的に頭を空っぽにすべきだと思います。

まあ、そんなわけで。
サメ映画…と耳にすると“B級”の印象が拭えませんが、本作の主軸は物語構成の妙。巧みに仕掛けられた伏線を楽しむ作品でした。それと、アカデミー助演動物賞を受賞したカモメの演技も見どころですね(註・そんな賞はありません)。

ちなみに本作が人生初の“サメ映画”。
何がテンプレートで、何が斬新なのか…未だ分かりません。見当違いのことを書いていましたら、ご指摘ください。
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