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最後の追跡のSSDDのレビュー・感想・評価

最後の追跡(2016年製作の映画)
4.5
■概要
テキサスの田舎で小さな銀行を叩き、追跡可能な札束を除いて強盗する二人組。
定年間近のレンジャーが相棒と追跡を始めるが秀逸な計画性を持っていることに気づき、パターンを先読みしようとする。
二人組の強盗は計画を進めるが…ことは計画通りには運ばない。

■感想(ネタバレなし)
本国ではアカデミーも取り評価も高いのだが、日本では公開されずNetflix映画として配信のみ。

ネオ・ウェスタンでありしっかりとした現代西部劇を展開しながら、クライムサスペンスとしの作りの良さとそれぞれの登場人物の人間性を描き出している良作。

現代社会問題を提起しつつ、派手な銃撃戦やアクションを主体とせずに魅力的に引き込んでいけるのは脚本が素晴らしいからか。

ウィンド・リバーにも感じるネオウェスタンは観ていて痛快さと悲歌的でもあるのが魅力的で、現実の厳しさを感じながら生きる中でいい栄養素。














■感想(ネタバレあり)
・普遍的な搾取
先住民達が支配され土地を奪われていったが、今度は資本主義という名前の金融機関が今は搾取して土地を奪おうとしているという現実。
看板にも金融機関が即日での金貸しを謳うシーンや、先住民である相棒が昔は先祖の土地だったが今度はアレに奪われると銀行を指差す。

・勧善懲悪
高利で担保の土地を奪うために銀行が画策していたものを銀行から奪った金で払い、土地を買い戻し、石油からの資金を信託に回すことで銀行に自ら証拠隠滅させるという周到な計画。あまりに面白い計略。

粗暴だが家族を愛する兄は初めから囮をすることを前提だったので、泥を被るつもりで人を撃ったのだろう。最後には射殺される。

計略し完全犯罪をしたと思える弟も結局はレンジャーが言う通り、一生兄の死や罪を背負って生きなければならない。

レンジャーは定年を迎えて人生に倦ねているからいつかは相棒の死の決着として弟を本当に再度訪ねて撃ち合いになるやもしれない。

・総評
ウィンドリバー同様、必要最低限のアクションだけで構成され、現実的な問題提起をしながらも濃厚なクライムサスペンスとして成り立ち、脇役までに至ってキャラクター性が豊か。と文句のつけようがない。

ポストのダイナーのおばちゃんの"何がいらない?"というオーダーの取り方やら、チップを取られて激昂するウエイトレスなど無駄なシーンだとも冗長的には感じなかった。素晴らしい作品。
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