たつなみ

ブレードランナー 2049のたつなみのネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

前作へのリスペクトと深い愛情。
”続編”として非常に完成度の高い作品だと言える。
それだけに前作と本作に繋がる短編3作は絶対に観ておかなければ、この感動は味わえない。
そしてネタバレ無しではこの作品について語ることは出来ない。

原作小説や前作が持つ『人間とは何か?』という問いに対し、『記憶』というキーワードを巧みに織り交ぜる事により、見事に1つの回答を示している。
更には『生命の尊厳とは?』『親子とは?』といったテーマにまで踏み込んでおり、私の心の琴線に触れまくり。
ラストは感動の涙が止まらなかった。

ヴィルヌーヴ監督が示した回答とは、人間が人間たらしめているものとは『その者にとって大切なものとの記憶(思い出と言い換えても良い)』であるということ。

『大切な記憶の入れ物』として見れば、人間もレプリカントも全く違いはない。
この物語が「深い」と感じるのは、『じゃあその記憶が他人のものだとしたらどうなのか?』という自問自答まで行なっているところ。

結局Kはデッカードの娘の存在を秘匿する為に利用された存在だったかもしれないが、Kは彼女の大切な思い出によって人間の心に目覚めてゆく。
たとえ他人の記憶が書き込まれた偽りの存在だったとしても、Kは間違いなく人間の心に触れ、それを守り抜く覚悟を決める。
ここで泣かずにはいられない。
もう彼は”人間”じゃないか!

ラストでデッカードは命懸けで自分を守ってくれたKに対し、『俺はお前の何だ?』と尋ねる。
ニッコリと微笑むだけだったが、Kはあの時紛れもなくデッカードの”息子”だった。
まさしく本作はKの『自分探しの旅』。
遂に彼は己の使命に気づき、死に場所へと辿り着く。
雪の降る空を見上げるKの爽やかな表情がとても印象的だった。

そして、そのKを影で支える人工知能”JOI”の存在がとても泣かせる。
彼女もKとの思い出を紡ぐ事で、Kに人間らしい暖かさを注ぎ込む。
”ジョー”という名はKにとってのかけがえのないJOIとの思い出。
量産品のJOIではなく、”あのJOI”こそがKの大切な存在なのだ。

それにしてもレイチェルの存在は奇跡的過ぎる。
人造人間でありながら生殖機能を持つなんて、ちょっと飛躍しすぎなのでは?と思ったが、レプリカント達が完全に心を持った事から、もはや決着のつけ方はこうするしかなかったのかもしれない。
いずれにせよ、30年という年月を経て、『人間とレプリカントとの融合』という形でロイ・バティ達の願いが叶う事になるのだろう。
(私はデッカードは人間だと思っている)

原作ファンへのサービスなのか、年老いたガフが折る折り紙が『羊』だったのはちょっと笑えた。
前作の世界観を完全に踏襲しつつ、さりげなく独自の演出を加えている所あたり、ヴィルヌーヴ監督のセンスを感じる。

R.ゴズリングは『ドライヴ』に引き続きクールでカッコいい役回り。
本当にズルい位にカッコ良すぎる。
アナ・デ・アルマスは『ノック・ノック』の時から「かわいいなぁ」と思っていたが、今作で完全に心を奪われた。
これから彼女は女優として絶対に飛躍するだろう。
そして勿論H.フォードの存在感!
高齢ながらアクションもこなし、素晴らしい演技だった。

スコアは『前作を観た上で』という条件付きながら500億点です。