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ブレードランナー 2049のはくあのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.9
元祖「ブレードランナー」の対立軸は言わずもがな「レプリカント-人間」だ。ヒトと見分けのつかない人造人間があらわれたとき人間のアイデンティティは危機にさらされる。
……というところに、それ以外の重層的な対立をもちこんで大長編に仕上げたのがこの映画。ドゥニ・ヴィルヌーブ、壮大な画を撮るのもうまいが人間の内面を撮ることにかけてはそれ以上の天才である。

あらすじとしては「ライアンゴズリングが捜査官になって無印の主人公デッカード(ハリソンフォード)を探す」だけ覚えておけば大丈夫。これ以上は何を言ってもネタバレになる。いやほんとに。

とはいいつつちょっと本編にも言及しておくと、まず冒頭は一面オフホワイトのタンパク質農場の上空を飛んでいるところからはじまるが、もうすでにカッコよすぎてノックアウト。このあと出てくるロサンゼルスの街並みも、無印のギラギラ感よりは抑制的な雰囲気でgood。ウォレス社の内装もいい感じだった。

ストーリーとしては先述したとおりライアンゴズリングがアイデンティティの喪失と獲得と喪失にくるしみながらも戦っていく感じ。空っぽだからといって何も成し遂げられないということにはならないんだなあと……
内面に深く切り込んだ映画であるにもかかわらずアクションもよかった。数が多いわけでもすごい技をつかうわけでもないが緊張感がみなぎっている。豪雨のラストバトルめちゃくちゃ感動したなあ。

上映時間だけをみてタルコフスキー「惑星ソラリス」を思いだしたけど、上映時間以外にも共通する部分はある。
まずSFでありながら結局は「人間」を描いた作品であること。SFってそもそもそういうモノなのかもしれないけど。そしてふたつ目は、「惑星ソラリス」も記憶をうめこまれたレプリカを描いた作品であること。など。
そういえば作中の景色もどことなく「ストーカー」「ノスタルジア」「サクリファイス」を思わせる。枯れ木とか水とかね。

いやー、よかったなあ。あのブレードランナーの続編という意味だけでなく歴史に残る作品だと思います。あっぱれ!
はくあ

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