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午後8時の訪問者の655321のレビュー・感想・評価

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
3.5
コンビニで買い物を済ませて車に乗り込もうとした時、隣の車のドアが全開になっていることに気付いた。

「誰かいる?」
「誰も乗ってない」と妻は答えた。

私がドアを閉めようとすると
「やめときなよ〜」と嫌そうな顔をしていた。

少し迷ったが、
結局閉めた。

善がどうとか大層な話じゃなくて、
寝覚めが悪いのはゴメンだ。


【あの時ああしていれば…。】


ジェニーのこれからが少し心配。
きっと色々な“あの時”に取り憑かれてしまう人だから。
彼女は“これから”を見ているのではなく“あの時”の失敗を取り返そうと躍起になっているだけに見える。

劇中でジェニーは大きな病院への栄転を断り、診療所に残る決断をする。
しかし診療所の設備では限界がある訳で。
いずれ訪れるその日にまた彼女は「あの時…」となってしまうのではないか。

生涯後悔しない日々を過ごすなんて土台ムリな話であって、彼女の生き方は傲慢にすら思える。
私が観たダルデンヌ兄弟作品の主人公の中で最も後ろ向きな人だと思う。
後ろ向きでずんずんと前に進む彼女はいつか転んでしまいそうで心配だ。


ベルの音に怯えながら生きていくより、
ベルの音で気持ちよく目覚める方が
健康的だと思うんだけどなあ。
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