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わたしは、ダニエル・ブレイクのxoのレビュー・感想・評価

3.8
労働者階級の人々の日々の営みを、誇張するでもなく描写。皮肉とユーモアを込めたコメディ調で、カラッとしていて非常に見やすい。明るい昼間のシーンが多いのもその一因かな。

生活の描写って意味では「ノマドランド」を想起したりもしたけど、情緒的だったり美しいものを映し出そうとしたりはまったくしない。それが日常だから、感情のアップダウンもないし絶望もしない。そこがリアルだと思う。格好つけていないというか、フワッとした情緒に流さない明確な問題意識がある。

序盤から中盤は、"賢いものだけが勝者の時代"ってのをコメディタッチで描写。話が進むに従い、それにとどまらないレベルの"社会の歪み"が顕在化してくる。冗談のような現実。
いまの日本と重なるところを随所に感じた。。

にしても"お役所仕事"ってどこの世界でもあるんだな。。ただ、彼らも彼らであの振る舞いが組織(行政)から求められているわけで、「お人好しが損をする」って構造自体が問題なんだよな。。

福祉サービスを受けにきて「サンクション」ってのもすごい話。サービスを受ける立場を知らない人が自分たちの利益のために制度を作ると、こういう不条理極まりない冗談みたいな現実が生まれちゃう。
そして、生活のために不正義を働いたり身体を売らざるを得なくなったり。。

ただ、利他性への希望の光も映しているのが今作。各所での「困ってるなら言ってくれ」という声がけ。これがフィクショナルに思えなくなる社会ならば良いんだけどね。。。
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