いずみたつや

ローサは密告されたのいずみたつやのレビュー・感想・評価

ローサは密告された(2016年製作の映画)
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白と黒の真ん中を命がけで綱渡りせざるを得ない残酷な環境。フィクションとはいえ、その強烈な"現実"に圧倒されました。

俳優にはシナリオを渡さず、監督の指示のみで撮影したそう。手持ちカメラの迫力の撮影と鬼気迫る演技で空間にまで魂が宿り、画面の外の景色さえ実在感をもって広がっているように感じました。

フィリピンの貧困と麻薬状況は、こうしてリアルな映像で見せられてもにわかには信じがたいものがあります。特に警察の腐敗っぷりには愕然としますが、彼らもまた貧しさゆえに悪事に手を染めていくという負のスパイラルが生じていることがなんともやり切れません。

しかし、どんなにそこが恐ろしい場所であっても、そこで生きていくしかない人たちがいるという現実をこの映画は突きつけます。

ローサの涙は、そんな先の見えない絶望とやり場のない怒りを象徴しているように感じました。