えーこ

セールスマンのえーこのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
3.5
エマッドとその妻ラナは同じ劇団の俳優。
引っ越したばかりの自宅でラナが何者かに襲われる。
犯人を捕まえようとする夫、表沙汰にしたくない妻、
感情がすれ違い始める。
冒頭の壁の亀裂は、まるで夫婦間の亀裂を暗示するかのようだ。

ほんとこの監督さんは、人物描写が巧みで、
そのリアルな演出にハラハラさせられる。
事件をきっかけに、価値観の違いが顕になり、
だんだんお互いが理解出来なくなっていく様が見事に描かれている。

劇中に「セールスマンの死」の舞台シーンが随所に挿入されるんだけど、
これは、"時代の変化に取り残された戯曲の主人公の境遇を、急速に近代化が進むイランの社会状況に重ね合わせた"とあるが、
社会は進歩していっても、男尊女卑が根強く残り、人々の意識はまだまだ因習的で変わらないということだろうか??
戯曲の主人公は"死をもって精算する"…

このまま二人は"夫婦"を演じ続けるのか、
それとも"別離"の道を歩むのか。
"セールスマンの死"に囚われたまま、今日も幕は上がる。
えーこ

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