回想シーンでご飯3杯いける

セールスマンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
3.0
2017年アカデミー賞 外国語映画賞受賞作品。監督は「別離」が素晴らしかった(こちらもアカデミー受賞)イランのアスガー・ファルハディ。

今回もイランの社会背景を描写しながら、夫婦の価値観の行き違いを絶妙に描いている。夫の留守中にアパートに侵入してきた男に、奥さんが暴行を受ける事件が発生。どうやら犯人はアパートの前住人と関係がある事が分かり、犯人探しと復讐心に燃える夫と、傷を負いながらも警察沙汰にする事を拒む奥さんの、微妙な感情のずれが徐々に広がっていく。

演出的にはサスペンス要素低めで、夫婦の感情の動きを中心に描いた構成。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「プリズナーズ」にも近い印象だ。更にこの夫婦が街の劇場で舞台劇の名作「セールスマンの死」に出演している役者という点がポイントで、どうやらこの「セールスマンの死」の中にも伏線が埋め込まれているようなのだが、映画の中で詳しい描写が無く、その内容を知らない人にはちょっと厳しい。

「セールスマンの死」を知らなくても、もう少し楽しめるつくりにして欲しかった。