こたつむり

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.5
★ お化け屋敷的な恐怖映画…だけど、本当は

ホラー映画史上空前大ヒットの宣伝文句。
代名詞である『It』に潜む多様性。
副題の『それが見えたら終わり』から感じる陳腐さと不気味さ。

そんな漠然とした印象から「面白いのかもしれない」と期待値高目で鑑賞しましたが…いやぁ。これは煽り過ぎでしょ。製作費回収の観点からは正解でも、作品の評価で考えると過剰なアピールだった気がします。

しかも、本作が“第一章”だったのも驚き。
確かに調べてみれば「“第二章”が2019年に公開」と発表されていることが判りますが、タイトルからは伺えませんからね。事前情報収集拒否派の僕としては「え。そうだったの?」的な気持ちになるのも当然の話。

また、全般的な作風としても鑑賞前に抱いていた印象とは真逆。薄気味悪さを引き摺る物語ではなく、甘酸っぱくて切ない雰囲気が強いのです。音楽も真正面から「青春って1,2,3ジャンプ!」と高らかに宣言していますからね。いやはや、老いた身には眩し過ぎます。

しかも、主人公たちは自分たちを“負け犬”と位置付けますが…いやいやいやいや。どう考えても、それは違いますよ。彼らが“負け犬”なら、僕は“下水道の片隅で震えるドブネズミ”。確実に彼らは青春を謳歌していると思います。

何しろ、メンバー全員が男じゃないのですよ。
欧米青春映画にありがちの“高いところから湖に飛び込んでやっほーい!”の場面で、ブリーフ姿に混じって“紅一点”も下着姿で飛び込んじゃうのです。絶対に勝ち組でしょう。

とは言え、彼らにも同情すべき部分はあります。特にヒエラルキーが固まった中でのイジメや、家庭内の性虐待を思わせる描写は、オープンな印象が強いアメリカも実は“陰湿”だと実感させるに十分。主人公たちが前向きだから多少は救われますが…。

まあ、そんなわけで。
薄暗い場面でも粒子が細かいことからも分かるように、ホラー映画ではなく明朗な青春映画と捉えて鑑賞したほうが良い作品。“恐怖描写”はアクセントです(それでも怖い人には怖いのでしょうが)。

ただ、どう考えても本番は“第二章”。
この後がどうなるのか…本作の雰囲気を引き摺って鑑賞したら「うげぇ」となる可能性もありますからね。“ゴミ箱の周りをブンブンと飛ぶコバエ組”の僕としては、それに期待したいと思います。
こたつむり

こたつむり