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PARKS パークスの8637のレビュー・感想・評価

PARKS パークス(2016年製作の映画)
4.4
実はもう3回目。同じ瀬田なつき監督の「ジオラマボーイ・パノラマガール」を観たから今回また新たな発見に気付けるんじゃないかな、というのと、アマプラからなくなりそうだったから観た。

とにかく、すごい映画。

「ラマラマ」に比べだいぶミニシアター感があるけどそれもそのはず、この映画は東京の中でも吉祥寺を舞台にしている。
岡崎京子の漫画を映画化させた「ラマラマ」とは違いこれは全てがこの映画、あとは井の頭公園のために作られた物語。

"東京"という浪漫の中に"東京"という現実。2017年の東京を軽々しくも100%で映した点で「ラマラマ」に比べ時代背景や現実味はあるが、夢以外のものも見させられる。

「春から順に時を経て、一日、一年、十年、百年。このメロディが...」
自転車と共に駆けていく季節。
現代の中でそのうち過去を見つけていく。
この映画が行おうとしていることについて今はっきり分かるのは、「現代を過去で埋めていく」という事なのかも。

そのためにまず、2017年の音を捉える。
日常の好奇心に"諦める"はなく、その音を聞くだけで情景がいつでも浮かぶ幸せもある。
僕もこんな感性を持って街中を歩いてみたいもんだ。

そして生まれる難点は、音楽の多様性というところにあった。
「このメロディが、愛に変わる。そして壊れる。もいちど見つけて。さらに失くして。また見つける。」
"ダンサブル"という要望に応えてしまえば結局完成形も、過去と今を繋ぐ絆みたいなものもなくなってしまう。世間に求められているような需要と忘れてはいけない本当の目的として、それは本当に正しいのか。確かに見失ってしまうよな。

これについて悩むのがもう一組いた。佐知子と晋平。「俺はこの曲さっちゃんのためにつくったんだけど」という台詞からも、"世間"という目的と"ど直球のラブソング"というゴールの狭間が見える気がする。
ハルという存在を介して、過去にも進行形の現在を作るというこの邦画が作り出せる一種の哀愁もあるように感じる。
このシーンめちゃくちゃ好きなんだよな。恋の素晴らしさを感じる唯一のシーンでもあるし、その点でやはり「ラマラマ」と同じようなエモさも感じる。

あとは"自分の過去"という視点で純の子供時代の黒歴史を取り入れたのもよかったかも。これが後に表舞台に立つというハンデをえぐり出すことになってるし。

結局純は皆を振り回してるし、自分だけが楽しもうとしてるかもしれない。こういったキャラってあんまし好きではないのだが、橋本愛が演ってるってところに疑いも感じる。

ハルの純粋さが生んだ時空のこじらせは、もしかしたらノーランよりも難しく映画的かもしれない。真の「PARK MUSIC」が聞こえた時、ここで過去に取り残された現代の人々の物語へと終わる。
現代と過去が音楽によってやっとこさ交差するあの一瞬(分かってもらえるだろうか)が大好き。

まぁ長々と語ってしまったのだが、とにかく大好きだという話です。多分「ラマラマ」もこうやって語る日が来るだろうな。
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