TS

チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話のTSのレビュー・感想・評価

3.8
【甘さを置いていかないと上にはいけない】80点
ーーーーーーーーー
監督:河合勇人
製作国:日本
ジャンル:スポーツ
収録時間:121分
ーーーーーーーーー
2017年劇場鑑賞24本目。
試写会が当たったので一足早く見てきました。ギャグ全開で寒いと聞いていたので恐る恐る見ました。確かに前半はそういう節があり、これは微妙かなあ?と思ったのですが後半でかなり挽回した模様。結果的には中々のスポ根映画と感じました。副題でも分かりますが、実話だそうです。

福井県の福井商業高校。元々はバトンチア同好会だったものが、早乙女先生の尽力によりチアリーダー部に昇格。そして新一年生として天真爛漫な友永ひかりが入学してくるのだが。。

鬼顧問を務める早乙女先生は実在の人物だそうで、他の部員も福井商業高校の元部員をモデルとしているそうです。最初こそ、見てるこちらが恥ずかしくなる寒いギャグが連発するので不安がよぎられます。しかし、彼女らが一致団結し、本気で全米制覇を目指すあたりからエンジンがかかりはじめます。この映画のために、広瀬すずをはじめとするヒロインたちはかなりの特訓をしたことでしょう。全米制覇できるレベルには至っていないと思うのでダンス自体はやや迫力に欠けますが、それ以上のメッセージを今作から受け取れたので概ね好感を持てました。

僕は、今作を特に卒業間近の高校三年生に見て欲しいと思いました。もし、これを見た高校三年生が、彼女らと同じように三年間部活動に没頭してきたならば、恐らく終盤で涙を流すことでしょう。何かを成し遂げるには「甘さ」は置いていかなければならない。時には嫌われ役にもならないといけない。部員の中で「甘さ」の象徴でもあった友永ひかりは中盤で完全に浮いてしまいます。そしてその姿勢は、まるで自分を投影したように感じたので個人的にかなり嫌気がさし、そして大いに考えさせられました。
自分自身、気まずい空間が嫌いなために、場を和ませようとする傾向があります。それはプラスに働くこともありますが、今回のようにトップを目指す立場からすると完全に蛇足。それは恐らく自分がそういう雰囲気を好まないからしようとするのでしょう。確かにチームとして場を和ませることも重要ですが、それ以上に、本気で取り組むのならば「甘さ」は置いていかなければならないものなのだと理解させられました。そして、それは早乙女先生も、部長である玉置も同じでした。早乙女先生は、彼女らに優勝した者にしか見えない風景を必ず見せてやりたい!という一心の思いで彼女らに厳しく接してきました。それが成就できるならば自分は嫌われても構わない。まさしく嫌われる勇気です。これは教師には不可欠な要素ですし、他の職業においても同じでしょう。
甘さしかない現段階の自分に完全に足りていない要素です。ましてや教師になるならば必須要素でもあります。自分の将来のことも考えさせられた作品でして、そのあたりが好印象でありました。

全米決勝で流されるGood time やproblemは洋楽好きにはたまらない。映画館で、クラブで流れる曲を聴けることは早々ありません。甘さを置いていかないと上にはいけないという厳しい現実も視野にいれた真っ当なスポ根映画であります。先述した高校三年生は勿論、学校時代の部活動に全力で取り組んできた人にも響く作品と思います。そしてここで経験してきたチームワーク、厳しさというのは全て後の人生の糧となります。彼女らの「その後」を若干描いているのも良かったです。
しかし、真剣なスポ根映画のはずなのに全体的にギャグ路線に走っていたり、演者が天海祐希、広瀬すず、中条あやみ以外パッとしないなど粗もありますが、結果オーライと言ったところでしょうか。結構泣いている方々もいたので、泣ける映画とも言えそうです。僕も早乙女先生の裏の努力のシーンには涙が出ました。

ということで、本作は3/11に公開です。興味のある方は是非。それにしても、中々唐揚げが食べたくなる映画でした(笑)
TS

TS