わたふぁ

思いやりのススメのわたふぁのレビュー・感想・評価

思いやりのススメ(2016年製作の映画)
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仕事を得るために介護ヘルパーの資格を取得したベンの初仕事は、筋ジストロフィーを抱える気難しい少年クレイグの介護だった..。

障がいに纏わるタブーをタブーとせず、デリケートだと思われる所にも踏み込んで、“シリアス”という名の箱を開けたり閉めたりして、ブラックジョークで互いに傷つけ合いながら緊張関係が解けていく...という流れは、障がい者×ヘルパーの関係を描いた最近の映画ではもうお馴染みだが、今回の二人は手強い。エッヂの効いた笑えないジョークの攻防戦が一つの見どころかもしれない。

クレイグが顔の前に中指を立ててファックサインを作るんだけど、筋肉が固まった手は丸まったままで、ベンは「そんなの迫力ねえわ」と嘲笑するんだけど、
反対にクレイグがベンに「時給9ドルで人のケツ拭いてる人生でいいの?」って聞くのも同じだけ失礼。体が一応健康な健常者ってだけで、人には人の事情がある。

これは難病ものという体を成した1人の男の再生ドラマ。親になる心構えを妊婦に語るワンシーンにはぐっときた。

誰しもみんな、親がいたから今の自分がある。
ボタンの誤飲とか、尖ったものを持ったまま走らないとか、回ってる物に指を突っ込まないとか、ストーブには近寄らないとか、、みんなそういう同じような過程の中であらゆる危険を回避しながら育てられて。
10年、20年という長い年月を積み重ねてもらったからこそ今日の「ありふれた一日」があるってこと。それがどれほど奇跡的なことか忘れてはならないということを再認識させてもらった。

今日のありふれた一日が、奇跡の最先端なんだと思うと、なんだか自分がすごい場所に立っているように思えてくる。