りっく

アリー/ スター誕生のりっくのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
4.2
物語上いくらでも盛り上げられる場面であえて抑えた演出を施す映画人ブラッドリー・クーパーの品の良さが光る秀作。確かに彼が演じるアル中かつ聴力を失っていくスター歌手は、失態は繰り返すものの、堕落し切った割には小綺麗に見えるし、また彼とマネージャーの衝突と和解の物語も描写に不足があることは否めないだろう。

だが、レディーガガの実人生と重ねて見ることもできる新たなスターの誕生を見届け、静かにフェードアウトしていく酔いどれ天使の慎ましさよ。バーで偶然彼女のショーを見て目と目があった出会いと、彼女の栄光のショービジネス街道は二人三脚では歩めないと自覚しての幕引き。いずれもその決定的瞬間を的確に押さえる、まさに映画的と言わずにはいられないショットは神々しささえ宿る。

また、売れるために自分という存在に虚構の姿を上塗りしてステージに上がるプロデュースに対して、本当の素のままの自分、あるいは自分が本当にやりたい音楽を貫かなければ価値がないと決して断罪しない点もバランス感覚の良さを感じる。ショービジネスの世界で成功を掴み取るために支払う代償と犠牲。それを乗り越えてこその強さをガガが見事に体現してみせた。
りっく

りっく