SQUR

RAW〜少女のめざめ〜のSQURのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.0
観ている間にこれだけ劇場を出たくなる映画は久しぶりだし、
これほど終わってほっとする映画も久しぶりだった
ここで終わるんだ!
あぁ、良かった、"その先"まで行かないで!!

中盤から通して腹部に鈍い痛みとこみ上げかける胃液を感じながら鑑賞した
途中脱落者も何人かいて、堪えきれなかったのか、でも俺はもう少し頑張るぞ、と張り合ってみたりもした

この映画は指摘するまでもなく性の目覚めのメタファーだし、メタファーであることを強調し過ぎと感じるシーンも多々あった(特にラスト)
しかし、この"メタファー"のおかげで、この映画は結果的に今までにないほど、真正面からカニバリズムに向き合った映画になっていたと思う

この映画におけるカニバリズム表現は他になくしんどかった
その理由がまさにこの映画がメタファーであるところにあるところ思う
普通のカニバリズムでは(普通ってなんだろう)、人の肉を食べるのは異常者である
だから観ていて自分と切り離して考えられる
この人は頭がおかしいから人の肉をスナック感覚で食べてるんだ、って
しかしこの映画では、主人公は全女性の強いては人類全体のメタファーである(セクシュアリティ論的にはツッコミ入れたいところかもしれないけど)
つまり肉を食べるのは異常者ではなく、今ここにいる私
逃げ場なし
ただでさえ劇場の座席に束縛されているのに精神的な逃げ場も奪い去っていく非常にSM的な映画だった

中盤にショッキングな食肉シーンが入ることで、それ以後いつ食われるのだろう、どこを食べられるのだろうと絶え間なく怯え続けることになりホラー映画としても秀逸だった

この映画から得られる教訓といえば
獣医学部には近寄らないこと
上裸でサッカーしないこと
かな
SQUR

SQUR